警察官は交通違反の取り締まりでドンドン罰金を取っていい -- このエントリーを含むはてなブックマーク

久々にブロゴスを覗いてみたら、日本は交通安全週間だったのようで、大関暁夫氏の「やっぱりおかしい交通取締のあり方」がバズっていた。簡単に言えば「揚げ足とりみたいな方法で交通違反の罰金取るのはけしからん」というご意見で、かなりの賛同を集めている。

しかし、この記事やコメントを見て思うのは、逆に「普通の人の脳内と私の脳内ではこうも視点が違うのだなあ」ということだ。結論は表題の通りである。

別に、私が日本に住んでいないから取り締まりに賛成というのではない。私は米国のミシガン州に住んでいるが、この州の道路、特に高速以外の幹線道路で、沿道に警察署があるような場所では取り締まりの多さは日本の比ではない。時期にもよるが、高速を使わずに通勤すれば多い季節には行き帰り合計で一日平均10台程度のパトカーに遭遇する。おそらくその約半分は取り締まりをしているだろう。また、別の幹線道路では、スピードの出易い取り締まりスポットがあり、そこでは一年を通して、50%近い確率で取り締まりのパトカーに遭遇する。

結論にいく前に、まずは警察のダメ出しを先にしておこう。

まず交通違反の取り締まりが交通安全に資するかどうか、と言えば、はっきり言ってその効果はかなり限定的だろう。広い真っすぐな空いている道路で時速30キロ程度のスピード違反をしたところで、事故のリスクは極めて小さいし、見通しの良い誰もいない交差点で標識に従って一時停止しても、安全とは全く関係がない。看板が立っているのに、それを守らないドライバーが多いのは、それなりに合理的な理由があると考えるべきだろう。

もっと言ってしまえば、方法によっては交通取り締まりは危険を増やしさえする。私は取り締まりの多い道路ではパトカーが前方や分離帯に隠れていないか常にチェックしているので、それだけでも注意散漫になって、パトカーがいない場合に比べ危険だし、パトカーを発見した場合はいち早くブレーキを踏むので追突されるリスクも増している。また、取り締まり後は、路側帯で事情聴取が行われるために、ドライバーの注意がそがれて事故を誘発しやすいし、交通にも悪影響を与える。

さらに、仮に現状の交通ルールが理想的だとしても、それを完全に遵守させるためには警察官が取り締まるのは全く効率的ではない。スピード違反は路上や街灯にセンサーを設置すればほぼ100%取り締まることができるし、警察官を雇うよりも、センサーで置き換えた方が長期的に安く付くのは明らかである。また、交通を阻害する事もなくなる。

センサーで常に取り締まると違反をする人がいなくなって罰金が集まらなくなるから警察官がやるのでは?という推測も正しくない。センサーの稼働時間や取り締まり対象とする車のナンバーを最適化して罰金を課す方が、警察官が場当たり的に取り締まるより、はるかに罰金額を最大化しやすいからである。

それではなぜ私は、それでも警察官による交通違反の取り締まりを支持するのか?その理由は(1)警察が税金で運営されていること、そして、(2)警察業務には繁忙度の変化が激しいことだ。

まず考えてみて欲しいのは、どちらにせよ警察は税金で運営されているということだ。集めた罰金にしても、それは回り回って警察の運営費用に充てられているのと同じである。別に警察官の懐に入っているわけではない。つまり、我々市民の選択肢は「罰金を払うか、払わないか」ではなく「警察の運営費を税金で全て賄うか、罰金を充当して税金を節約するか」の二つなのだ。単純化すれば「一人一律5千円の税金を払うか、税金を払わない代わりに二人に一人の割合で交通違反を取り締まって1万円の罰金を課すか」の二択と言ってよい。私だったら、取り敢えず税金は払わずに、取り締まられないように気をつける方を選ぶ。一万円の罰金など気にしない富裕層は、危険でないと思えば違反をして運が悪い時には罰金を払えばいい。

もちろん集金額を最大化したいだけであれば、道路にセンサーを設置して、一時停止なりスピード違反なりを取り締まればいい。しかし、事はそう単純ではないように思われる。警察は、自然災害や、事故、サミット等の大きなイベント、デモや暴動などがあれば、大きな人手が必要になる一方、平常時には最低限の人員で済むという繁忙度の変化が激しい業務内容になっている。災害や事故が起ってからバイトを急募するわけにもいかないので、平時には大量の余剰人員を確保しておく必要がある。したがって、そうした予備的人員の有効活用という観点から、交通違反の取り締まりで「資金稼ぎ」をする、というのは経営方法として理にかなっている。程度問題ではあるが、例えば、業務を民間に業務委託して利益を外部に流出させるよりも、予備的人員で業務を賄った方が好ましい可能性が高い。仮に取り締まりが明白に事故の減少に結びつかなくても、ルールが恣意的でなく、比較的交通安全に資する方法で行われている限りは、市民の不利益にはならないだろう。

もちろん、大雨で事故が多発、交通が大混乱している時に「今週は交通安全週間だから」などと悠長に取り締まりをしている警官がいれば市民は苦情を入れてよいし、年中、取るに足らない交通取り締まりばかりしている警察官は社会の役に立たないので、そうしたポストは廃止すべきだ。

しかし、多くの国で行われている一見腹立たしい交通違反の取り締まりの多くは、実は警察という特殊な業務のコストを下げるのに貢献しているのではないか。
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No title

匿名さん:

情報ありがとうございます。いろいろと勉強になります。

No title

警察組織が常に予算を必要としている部分には同意します。
一方で「警察官は交通違反の取り締まりでドンドン罰金を取っていい」には同意しません。

なぜなら、警察に本来課された治安維持任務実施のために組織維持が必要であるにも関わらず、実際には予算が不足していてそれを実行できないならば、国民にむけてそれを堂々と訴えて正規に予算確保することが行政機関の努めだと思うからです。

そもそも、何かしらの理由で予算が不足しているからといって、警察の取締手口をしらぬ一般ドライバーからの
収奪行為を許容することは、警察組織だけなく各種許認可権を司るあらゆる行政機構は最果てなく腐敗して、
我が国の民主主義制度そのものをますます危うする危険性をはらむからです。

・・・・現在の警察がおこなうほとんどの交通違反取締りは、説明責任を果たさずとも、自分たち都合だけで予算を得られる彼らにとっての麻薬のような制度にみえます。
警察都合でなく、交通安全実現を目的とした取り締まりが行われる当たり前の日を切望しています。
(そのために税金が増えるならば、残念ながら考えなくもありません。笑)


余談ですが留学先のお国の昔の大統領は、
「信頼はいつも専制の親である。自由な政府は、信頼ではなく、猜疑にもとづいて建設せられる」
とおっしゃていましたね。

No title

一般ドライバーの考え方さん:

実のところ、その通りですね。取り締まりをしても良い状況ももちろんありますが、
今回のエントリーはちょっと考察が足りなかったような感じがしています。

No title

ご丁寧なお返事恐縮です。

釈迦に説法で恐縮ですが、青切符を切られたドライバーが反則金を支払ったお金の流れを知ると、地方警察がいかにこのシステムで、その影響力を地元事業者に行使しているかがわかります。
同時に、なぜ事故の抑止、あるいは数を減少させる有効な検挙について、警察組織が熱心でないかを理解することができます。

「交通安全対策特別交付金制度」本当によく出来た官僚ビジネスモデルです。

最後の伏魔殿は地方警察の人事考課制度にあるとみています。
自転車窃盗、職務質問、交通3悪の「検挙数」について、現場警察官に対して非公然ノルマが課されているのはほぼ間違いないと推測しています(おそらく地方警察レベルで)。

当然、警察組織がその存在を公式にそれをみとめたことはありませんが、元警察官の証言はありますし、報道を注意深く見れば、検挙実績の捏造や数値操作の事例は枚挙に暇はありません。
捏造が発覚すれば、平均年収800万円、退職金2000万円を失う地方警察官が、それでもリスクを負う理由は、猛烈な検挙数ノルマ主義以外にありえません。
(そもそも、年度初めに総務省がその年度の交通違反反則金収入を予算化して公開してますけどね。苦笑)

私論ですが、現在の交通違反取締り制度は、現役警察官、一般ドライバーの誰しも幸せにせず、一部の警察庁幹部と地方警察幹部OBを地元道路管理事業者に天下りさせるためだけにつくられた腐敗した集金システムにしか見えません。

もし自分が警察庁幹部なら、いまの悪名高いシステムにピリオドを打って、国民に自浄努力をアピールしつつ、別の名目で700億円程度の財源を考えますけどね。比較的簡単にできると思います。

No title

一般ドライバーの考え方さん:

コメントありがとうございます。天下り問題は、警察官の雇用をどうするのかという意味では結構大きな財政問題なのかも知れませんね。

無駄かも知れませんが

同じような事は、日本の土木工事業者と災害対策の関係にもありました。私も少々関係していたので実感があるのですが、某緊縮財政の影響で特に地方の土木業者が食えなくなり、廃業せざるを得なくなった時期がありました。確かに税金の「有効活用()」されているようで、モノから人へお金が使われるようにはなったようです。しかし、近年増加・深刻化している災害への対応が、土木業者の減少で後手後手になり、地方の生活そのものが成り立たなくなりつつあるようです。分かり易いのは除雪作業で、降らなきゃいいのですが降ったら降ったで即応しなければなりません。にもかかわらず、即応できる業者がいなくなり対応できないそうです。変なたとえですが、昔の長屋にいたやくざ者、用心棒のようなモノで普段役に立たないぐうたら者が、いざと言うときは真っ先に駆けつけて厄介事をかたづける。土木業者も普段は無駄だと言われていた公共工事で一年で同じところを何回も掘り返し、工事していました。私も建設業に関係するまでは「無駄なことやりやがって。この渋滞なんなんだ!」と憤慨していたのですが、事情を知るにつれ、理解できるようになりました。同じところを何度も掘り返す、同じ問題を何度も解き直す、いずれ考えなくとも問題は解けるようになり、重機の使い方も手早くなり間違えなくなる。警察や軍隊も同じです。無駄なことなんてないんだ、生まれつきの即戦力なんていないんだと思うこの頃です。

No title

布哇庵さん:

コメントありがとうございます。稼働率の低いサービスをどのように維持するのかというのはどこでも難しい問題ですね。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
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2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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