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米国の学部で学ぶために一番大切なこと -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ここ5年ほど、日本でも海外留学への関心が高まっている。経済的に敷居の高い日本から米国への学部留学も増加する可能性がありそうだ。そこで、一大学教員として、米国の学部教育の現場で感じていることを書いておこうと思う。

アカデミックな意味で大学生活を成功させるためには、有名大学に入れるかどうかとか、入ってから一生懸命勉強するかとか、いろいろな要素がある。しかし、私は「入学までにきちんとした基礎知識をつけてくるかどうかが成否のほとんど全てを決めると言っても過言ではない」と考えている。それは入学時の基礎学力が、大学のリソースをどこまで活用できるかを決めてしまうからである。

米国の多くの大学では、日本の大学生と比べて入学者の学力のばらつきが非常に大きい。超名門校においても下位層の学力は日本の一流国立大の足許にも及ばないし、私のいるWS大に至っては「学部生の半分は100の平方根が50だと思っている」という笑い話があるほどだ。一方でWS大においても、私より優秀なのでは?と思うほどの博士課程の学生もおり、そんな学生もWS大の学部で学んでいたりするのだ。つまり、日本で言う東大レベルの学生もいればFランク大レベルの学生もいるということだ。当然ながら、学生によって取る授業は入学当初から全く異なる。

私は数学科に属しているので、うちの大学で学生が履修する数学科目がどのようになっているのか説明しよう。ちなみに、うちの大学では全ての学生は数学科目を一科目は履修しないと卒業出来ない仕組みになっている。

最も数学ができない学生が取るのは、0番台と呼ばれる授業で、0900のような0で始まるコース番号がついている。これらのコースは大学の単位として認めてもらえないので、学生は小中学校の復習のためだけにお金を払っているようなものだ。授業は整数の四則演算から始まり、分数、小数、百分率、と言わば小学校で習うことから復習していく。それだけでも驚愕ものだが、更に問題なのは、たった一学期の授業で、方程式や不等式、多項式の計算や、グラフの書き方までやることだ。私には、18歳にもなって小学校の算数があやふやだった学生が、一学期間でこれら全てを習得できるとはとても思えない。結局のところ学生は、曖昧な理解のまま、次のコースを目指して博打を打つ、という全く救いようのない状況なのである。

なんとか日本の中1レベルのことが出来る学生は、1000番というコースを取る。クラスは200人の大教室で、内容は無理矢理作ったカルチャー講座のようなものだ。乱数表から数字を取り出して度数表を作ったりと意義を疑いたくなる問題をやらされたり、かと思えば、いきなり中心極限定理を紹介されたりする。ともかく数学をきちんと理解させようと作られたコースではないので、一生懸命勉強しても、次の数学のコースを取るにはほとんど役に立たない。10ドルの古典的な啓蒙書でも一冊真面目に読めば、十分に同等の知識を得られるだろう。研究で忙しいTA達が、試験問題の数字だけ入れ替えた問題をともかく学生に繰り返しやらせて、形式的に点数を取らせるだけの科目でもある。

もう少しできる学生は、中学・高校で習う数学を復習するコースを取る。これも1000番代のコースである。日本の中学レベル+三角関数に相当するレベルと、指数や対数なども含む日本の高1レベルのものがある。この2科目を取るだけでも、6クレジット程度になるので、大雑把に言って1年の4分の1を高1までの尻拭いに使うと言っても良い。授業は30〜40人の中規模のクラスで行われ、教えるのはTAや易しいコース専門のインストラクターだ。

なお、ここまでのコースは、基本的に取る必要のないコースである。自分で復習して学科のテストにパスすれば免除される。つまり「自分で復習ができない学生」のためのコースと言っても良い。

理工系に進む学生のうち、まともな学生は2000番台のコースを初年度から取り始める。多くの学生が最初に取るのは、微積分入門である。しかし進度は早く、1学期間で簡単な微積分は終わらせてしまう。試験もそれなりに厳しいので、単位を再三落とす学生や、CやDなど将来に響く成績(米国の学部の成績は進学の際にとても重視される)を取る学生が少なくない。実のところ、多くの学生は真面目にやっているにもかかわらず、良い成績が取れない。米国の大学というのは基本的に優秀な学生以外は途中で振り落とすという仕組みでやっている。「真面目にやれば報われる」という日本の学校制度とは趣が異なるように思う。結局のところ、高校で一度、微積分を学んだことがあるかどうかによる差が大きいようだ。

2000番台の科目にも、なんとか背伸びして無理に登録して来る学生が多くいる。こうした学生の中には本当にやる気のある学生もいるのだが、残念ながらやる気だけでは数学はできないようだ。不十分な基礎知識では、いくら勉強しても、きちんとした成績でパスすることができず、逆に時間を無駄にする学生が多い。先学期もノイローゼ気味になるまで成績の事を心配して勉強しながら、結局学期途中でドロップアウトした学生がいた。日本では、米国の大学で単位の認定が厳しいことを美化する風潮があるが、実態は基礎知識が不十分なために、いくら一生懸命やっても成績が付いて来ない、ということなのである。

高校で真面目に勉強した学生は2000番台のコースもいくつかの免除を受け、3〜4年になれば、5000番台の学部上級/修士向けのコースを履修する。そうした学生が、数学専攻の学生というわけではない。単に、高校までで真面目に勉強してきたかどうかの違いである。このレベルのコースは、多くとも10数人程度の少人数のクラスが多く、専任の研究教員が自分の得意分野を教えるので、講義の内容も深く、面倒見も良い。成績評価も教員の裁量に任されるので、学生も成績を過度に心配せずに、知的好奇心を持って授業を受けられる。教員の方も「演習問題が載ってるページが分からない」とか「練習問題と試験問題が違うので困る」などと文句をいう困った学生がいなくなるので、講義内容に集中できる。せっかく大学に来るなら、このレベルの授業を受けなくては損だし、逆にこのレベルの授業であれば必ず授業料という投資に見合うだろう。


巷の大学ランキングを見れば、ハーバードやイェールなど有名私立大が上位に並ぶ。そうした大学は、学生のテストスコアも高く、卒業率は高く、教員一人当たりの学生数は少なく、専任教員は多く、クラスは少人数制だ。いいこと尽くめのように見えるし、実際、優秀な学生が多い事は事実だろう。しかしいずれにせよ、学生の基礎知識が不十分であれば、どの大学でも同じように教えられている初歩のコースを受けることになる。

逆にWS大のような並の州立大学であっても、きちんとした知識を持って入学すれば上級レベルのコースを多く履修でき、結果として、学力の高いクラスメイトに恵まれるし、卒業も心配がなく、クラスは少人数で、専任の研究教員が教える授業を取れるのである。卒業後の進路にしても、医学部(米国では学部卒業後に進学)への進学にあたっては地元出身者、同一大学出身者は、有利な扱いを受けているようだ。大学院も人材が不足気味なので、優秀なら引き合いがある。


こうして見ていくと分かるように、大学で対価に見合った教育を受けたければ、ともかく高校までの勉強をしっかりやってくることに尽きる。これは、どこの国でも基本的には変わらないだろう。そして、米国ではその事が特に顕著である。この事に比べれば、ハーバードに行くか、州外の人が聞いたこともないような地元の州立大学に行くかは、二次的な問題と言ってよい。

近年は日米とも大学進学率が非常に高まり、大学に進学することがペイするかどうかに疑問が呈されるようになった。だが、真実はとても単純なことのように思える。高校まできちんと勉強し、大学で新しい事を学ぶ気があるのなら、大学は依然として素晴らしいところだ、という事である。
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テーマ : アメリカ生活
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No title

匿名さん:

コメントありがとうございます。初等中等教育でのレベル分けは難しい問題ですね。子供は傷つきやすいですし、いじめなどの問題もあるので、早い段階でのレベル分けはマイナスの効果が大きいようです。うまく機能するのは高校あたりからでしょうか。そうした問題を避けるためには、日本の中学受験がまさにそうですが、学校選択の段階で生徒を学力別にある程度分けるべきなのだと思っています。ミシガン州の公立高校も、そうした流れになっているように思います。

No title

確かに小学校でのレベル分けというのは弊害もあるでしょうね。ただ中学では、特に公立校においてMathのレベル分けは行われていることが多いように思います。

アメリカ社会は多様性が前提にあるので、中学ともなると、Mathのレベルのみではいじめの対象にはなりにくいような気がします。年度末のAward Ceremonyに象徴されるように、校内で光る存在であるためには他に方法がたくさんありますし、学力のレベルは物差の一つでしかない、という見方は日本に比べ根付いているように思います。いじめの問題は他の要因も含めたアプローチが必要でしょう。

G5の段階でレベル分けが行われ、再度高校進学時にレベルの見極めがあるので、早い子どもはどんどん学習を進めていきます。MathとWorld Language、一部Scienceについてもレベル分けが行われている公立高校もあります。Humanities (English & Social Studies)については学習に子どものmaturityが影響すると考えられるためレベル分けはあまり見られません。その分野で卓越している子ども達はGifted program/Enrichment programで特別な指導を受ける場合もあります。

有名私立大学同様、どんなにランキングの高い高校でも生徒の学力には幅があります。足切りラインはあれど、日本の中高一貫校のように、学力の粒がそろっているというわけではありません。ですから学校選択の際はプログラムの内容を吟味し、いかに個々のレベルにフィットしたクラスが取れるか(オファーされているか)ということが重要になります。

高校の段階では私立公立共に、オファーされているクラスのレベルに然程違いはないように思います。公立では近隣の大学のクラスを履修することもできます。もちろん学区域の良い地域限定の話かもしれませんが。公立でも高校進学の際、受け入れ側は入学してくる生徒の学力分けには慎重です。ですからG8の秋学期は、生徒達も戦々恐々としてクラスに臨んでいます。

以上、アメリカの東西海岸からの私見です。

No title

匿名さん:

米国が多様性を尊重する社会であることはよい事だと思います。そのため、レベル分けが日本より機能しやすいのも事実でしょう。その点は同意です。

一方で、米国の"Gifted"の概念には疑問を持っています。この言葉の実態は、生徒の潜在能力をきちんと伸ばさず、学校で教えなくてもできる子供だけに進んだ内容を教えればよい、という言い訳になっているからです。それも、本当の天才児を伸ばすということならまだしも、家庭環境が恵まれた子供が恩恵を受けられるというのが実態ではないでしょうか。

「早い子どもはどんどん学習を進める」というのは、あくまで現在の米国内だけを見た場合の考え方でしょう。例えば数学に関して、米国で「最も進んだグループの生徒」が受けるカリキュラムが、日本、韓国、台湾、ベトナム、ロシア、東欧などの「普通の子」が受けるカリキュラムと同レベルというのが実態です。米国内だけで見ても、現在APと言われているコースが昔は高校の一般科目として教えられていたケースもあるようですね。

米国の公立学校は、全ての子供にもう少し大きなプレッシャーを与えて、学力を伸ばす努力が必要なのではないかと思います。

No title

Willyさん

子どもの発達過程における一点を知能(標準)テストという一つの物差でのみ測り認定がなされるGifted Programについては疑問を唱える教育関係者も多いです。ご指摘のとおり、こうした学力テストのスコアーと家庭環境に相関関係があることは否めません。ただ、だからこそ、テスト結果に足切りラインを設け機械的に生徒を分けるのではなく、クラス内での子どもの観察をもとに、スコアーは低くともポテンシャルの認められる生徒を探し、Enrichment Programという名で特別な指導をしようという動きもあります。また、学校全体の中でのこうした取り出し指導は「できる子」向けのものよりも「academically challengedな子ども」への支援が優先されます。

教科によるレベル分けはskillとしての修得度から判断されるので、クラス運営としては効率が良いように思います。が、ここでのレベル分けは「問題を解くためのskillが一定レベルに達しているか」を見るのであって、必ずしも「どれだけ数学的ものの考え方ができるか。多様なアプローチができるか。」を見ているわけではないようです。数学のコンペティションで結果をだすための指導・訓練には別の場が設けられています。

日米以外については勉強不足なのですが、アメリカでは、高校内で適当なクラスがオファーされていない場合、近隣の大学等で上のレベルのクラスを履修することが可能なシステムを持つ地域もあります。 この場合、クレジットは履修する大学ではなく在籍する高校の卒業単位として換算されます。MathでしたらMultivariables、Diff Equations、ScienceであればOrganic Chemistry、Bioethicsなど。World Languageも履修可能です。(ちなみにこうしたクラスを学内でオファーしている高校もあります)APについては学生の多くが当然のごとくたくさんの科目で取る地域もありますし、独学しAPテストのみ受け大学のクレジットにする学生もいます。

最後に、日米の比較で忘れがちなのは、アメリカでは高校までが義務教育であるということ。どのレベルまでの学力をいつまでに身につけるべきと考えるかは日米自ずと異なってくるようです。

アメリカは格差社会故、学力の個人差及び地域差が非常に大きく、カリキュラムも州ごと、学校ごとに決められるので、「アメリカ」とひとくくりにして語るのは難しいと感じています。

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No title

面白い記事です!

米大学の学力の幅の広さというのには、僕も行きましたが、驚きました。 色んな人達が居て、僕の場合は特に、働きながら学部の授業で真面目に頑張ってる30-40台の人達には感銘・刺激を受けました。

大学以前の教育状況に関してのエントリー希望します! 経済格差・教育格差、お金の無い家庭の子供達は有名大学に行けるのか(私情ですみません)、とか。

No title

annabethさん

教育制度として望ましいのは、全ての子供にとって、高校までの授業をきちんと理解すれば大学で十分に戦え、経済的に恵まれた職業に就けるという機会があることだと思います。しかし、地域差、家庭環境の差、経済格差、教材の質、教員の質、下位層への極端な配慮(治安維持の目的でしょう)など問題が山積しており、抜本的な解決は難しいですね。最終的には、アカデミックな学習の大半をWeb上に移行することにより解決していく事になるのでしょう。

カギコメで頂いたリーダーシップの問題ですが、その必要性には、考える人のバックグラウンドによってかなりの温度差があるのではないでしょうか。高度に知識が蓄積された分野(STEMや法律、会計など多くの実務分野、アカデミックのほぼ全分野)では、専門知識なしに社会でリーダーシップを握れるようになることはほぼあり得ません。従って、専門知識と同時にリーダーシップを身につけるにはどうするか、という視点で考えないと教育リソースの無駄になってしまうと思います。

日本人でリーダーシップのある子が少ないというご指摘は、文化的な問題と共にボリュームも考える必要もあると思います。米国への移民一世には、優秀な韓国人が日本人の5〜10倍、インド人が10〜30倍、中国人が30〜50倍くらいいるというのが個人的な実感です。

No title

Oさん

職業柄、大学の事と、娘が通っている小学校のことはある程度分かりますが、中等教育はあまり詳しくありません。しかし、何か書くと、上の annabethさんのような方からコメントを頂けることも多いので、考えてみます。

「経済格差・教育格差、お金の無い家庭の子供達は有名大学に行けるのか」についてですが、「実は、試す前に諦めてしまう人が大半」というのが最近の流れだと思います。「最初から諦めてる人にどうやって希望を持ってもらうか」みたいなヘンテコな議論になっている感じがしています。

No title

Willyさんの掲げる理想の教育制度がアメリカで実現されるのは極めて困難で、時間のかかることでしょう。競争の激しい地区では学生の進路が二極化して、大学に行かず、テクニカルスクール、丁稚奉公をするなどの方法で仕事に生かせる術を身につけようとする子ども達もいます。中学校のガイダンスカウンセラーは高校進学前の生徒達にこうしたオプションについて話すセッションを もうけ、いかに高校生活を過ごすべきかアドバイスを与えています。知識の獲得であれば、WillyさんのおっしゃるようにWeb上で可能になっていますものね。(しかも無料で!)

ただ、教育には知識の伝授とともに、人格の形成という課題があります。そして、リーダーの素養は人格教育の大切な側面ではないかと感じています。

確かに高度に知識が蓄積された分野ではトップに立つ者に知識の量は求められます。でも、社会に生き、組織に属し、仕事をしていく中でプロジェクトが生まれ、それを遂行するために、リーダーが全てを知り尽くしている(個々の仕事が全部できる)必要はないのでは?信頼して任せられるメンバーがいれば、トップの者に求められるのは、高次にある目的に向かって優先順位を決め、取捨選択をし、実行を委ねられる力量。こうしたスキル獲得には、知識の修得とは別のトレーニングが必要であるように思います。

「日本人でリーダーシップのある子が少ない」というのは、鍵コメでも申し上げましたが、「現アメリカ社会」からの私見で、Willyさんが指摘する日本人・日系人の数自体が少ない故、という点にも同意です。リーダーシップのあり方も、リーダーの選ばれ方も、日米には違いがあり、日本社会にも素晴らしいリーダーは存在します。

アメリカの教育の現場でも真のリーダーのあり方は常に問われ、やみくもに「自分が!」とオレ様を主張するのはいただけないというのが教育者の中では共通の認識です。文化の違いはあれど、普遍的に機能するリーダーの素養というものはあるはずで、その育て方を模索中です。

(ご参考までにDrew Dudley TED Talkのリンクを貼ります。彼の唱えるリーダーシップは上で述べた「チームを統率する力」とは違いますが、見方を変えればリーダーシップとはどの文化においても誰にでもできる実行力及び姿勢なのだと考えさせられる、中高生にオススメのショートビデオです。)

http://www.ted.com/talks/drew_dudley_everyday_leadership?language=en

No title

annabethさん

私がエントリーで述べた事は、大学での成功、そしてキャリア形成や経済的成功のためには、基礎学力が大事であるということです。そして、コメントで述べた事は、そのためには初等•中等教育制度をしっかりしなければならないという事です。

学科の勉強とは別に、課外活動などでリーダーシップを養成することが人格形成上重要であることは否定しません。例えば、ピザ屋の店長や地元小学校のボランティアのサッカーコーチをたくさん育てることは社会にとって必要でしょう。

しかしながら、各学科をリーダーシップを意識して教育すべきかという点では、公費で賄われる初等•中等教育はリソースが限られているので、それ以前の単なる知識の定着すらできていない状態でやるとリソースの無駄使いになります。その点はかなり慎重に考える必要があるでしょう。米国が初等•中等教育に失敗しているのは主にそこに原因があるのではないかと思います。何でもやろうとせず、そこは高等教育に頼るべきでしょう。

従って、基礎学力の充実とリーダーシップの問題は、中等教育の段階までは、かなりの程度まで分けて考える必要があると思います。

中等教育

長年駐妻をしています。いつも先生のブログを読ませていただいています。

息子が中高をCAの公立校に通い、この秋大学に進学しました。
彼の学校でも、よくリーダーシップが大事だといわれました。
そこで、コミュニティーカレッジ以外の大学に行きたい生徒は ”リーダーシップ”作りに励みます。
クラブの部長や副部長、生徒会の理事、副理事など役職は複数あります。
すべては大学進学時のアプリケーションを飾るためです。そのうち本当にリーダーシップを発揮したといえるのは果たしてどのくらいいるのか。
アメリカ人の子供でもリーダーの素質がある子はたくさんはいないと思いました。大学のアドミッションオフィスもアプリケーションからそれがわかるのか、それも疑問でした。
ほとんどの生徒は将来のため、自分自身のためというよりは、身近に迫る大学受験のために ”リーダーシップ” をやっていたと思います。4年間をかけて、アプリケーションの内容を磨くので、良い経験にはなったのは確かですが、息子はこのリーダーシップと、ボランティア活動のために結構多くの時間を費やす必要がありました。

また、息子は州認定のgifted childでした。9年生のある日先生に呼ばれてテストを受けて、後日認定書が送られてきました。が、彼は天才児でも何でもないです。特別優秀だということもないです。まじめなだけです。普通です。彼の友達も何人かが認定gifted childでしたが、天才児などいなかったです。取り立てて特別な教育も受けたこともありませんし、なんら得したこともないです。学校には州からいくらかの補助金が出ると聞きました。
州によって、giftedの概念が違うのでしょうか。名前が大げさですね。

高校までの勉強をしっかりした生徒には大学は素晴らしいところというのは、息子が今体験していることです。





知識を身に付けるには予備知識が必要で、その予備知識を身に付けるにはさらなる予備知識が必要、ということでしょうか。私の感触では、大学に限らず、会社員でも同じですね・・・。

まずは知識の「詰め込み」でしょうか。ただ、学習意欲があるのに適切な情報・リソースにアクセスできずに伸び悩む場合と、意欲が無いために伸び悩む場合があるようにも思います。

No title

Maryさん:

名前が大げさと言うのはその通りですね。おだてて育てられ、大学でも自信ばかりあって学力のない学生には閉口します。近くのおばあさんが孫自慢なのですが「孫は全ての子供の上位7%に入るgiftedなの」と聞いて耳を疑いました。全米で上位7人なら分かりますけど。

米国の場合、全ての子に等しくリーダーシップやら課外活動やらを求める結果、一流大学には個性のない「良い子」ばかり集まるという弊害もあるようですね。

kさん:

やはり積み重ねが大事ということだと思いますね。詰め込みというのとは少し違うように思います。仕組みを理解せずに知識を詰め込むと忘れやすいので、時間が経つと学力差が開いていきます。

学習意欲があるのにリソースにアクセスできない、というのは問題ですね。その辺りはウェブ上のプログラムの活用で解決できる日は近いと信じていますが。

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No title

Willyさん、しばらくパソコンから遠ざかっていました。
多分、Willyさんも私も、土台は同じながら見ている場所が違う、といったところでしょうか。Willyさんは教育制度を、私は制度の中にいる者(育てる側)を、と。

基礎学力も人格も、ともに大切な教育の一面です。こちらでは中学の生徒会(student council)に立候補するためには、決められた成績以上であることが条件です。Willyさんのおっしゃる「各学科をリーダーシップを意識して教育すべきかという点」については、特に「学科」ごとにおけるリーダーシップの育成、というのは思いつかず、分野別のコンペ、くらいなのですが、そこではあくまでも特定の学問(discipline)における知識の教授・指導が主で、人格形成を意識しているものではありません。ゴールはあくまで「勝つ事」です(クラブ活動は別です)。しかしながら、上に立つ者には高度な知識・スキルとともに人柄も問われます。

学力と人格形成、二兎追う事ができれば申し分ありません。そして、アメリカの社会(上層社会)にはそれが求められます(表向きは)。どちらかに偏重しないように、バランスよく子ども達を育てていくことが大切です、アメリカで豊かに生きていくためには。との私見です。


Maryさん

肩書きだけのリーダーシップ。それを得る為の争奪戦。全て大学受験のレジメ作り。
悲しい事に、ある意味今の現実でしょう。
でも、それでもその戦いに挑み、すこしでも上位の大学に行きたいと思うのは誰でしょう?行かせたいと思うのは?

ボランティアの活動も、経験して初めて学ぶこともあります。公立校では卒業のrequirementになっていますが(私立では無しの学校も有)、公の制度では社会に求められる奉仕の精神を育成するため、と考えれば納得します。

アメリカで子どもを育て、この社会で独立して生きていけるようになることを願うのであれば、郷に入っては郷に従え、ではないでしょうか、一旦は。あとは子ども達が決める事だと思います。

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No title

成績が進路に響くとの事ですが最優秀の学生の多くはどんな進路を選ぶんでしょうか?

No title

>成績が進路に響くとの事ですが最優秀の学生の多くはどんな進路を選ぶんでしょうか?

ほぼ医学部です。あとは、医師のように多忙な職業に就きたくない学生に人気なのは薬学部あたり。これは世界的な傾向ですね。医学以外の分野の教員としては寂しい限りです。カリフォルニアやDC等では多少違うのかも知れませんが。

No title

ロースクールやMBAはメディカルスクールと比較すると人気ないんですかね?
アメリカの優秀な学生というとMBAを取って金融会社に就職するみたいなイメージがあったので

No title

名無しさん

> ロースクールやMBAはメディカルスクールと比較すると人気ないんですかね?
> アメリカの優秀な学生というとMBAを取って金融会社に就職するみたいな
> イメージがあったので

MBAは実務経験を積んでから行く感じなので、大学にいるとなかなか分かりにくいのかも知れません。ロースクールもあまり人気があるという印象がないですし、誰もが稼げる資格という印象もないのですが、もしかすると数学を教えてるとあまり出会わない人達という事なのかもしれません。

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ロースクールはそんな人気ないんですか。
日本だと供給が一気に増えた為に以前の様に資格さえ取ればおkという
職業ではなくなり人気は落ちましたね。
弁護士の場合は会費とそれから自営なので退職金や各種手当もないので
大企業に就職できる学生は見向きもしてないと思います。
アメリカもそれに近そうです。

No title

名無しさん

そうですね。弁護士がもれなく儲かったのは、日本が強烈に供給制限をしてた時代の事で、現在は日米とも、平均的には儲かったとしても、みんなが儲かる職業ではありませんね。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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