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節約型早期リタイアについて考察してみる -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日ネットサーフィンをしてところ、「一日不作一日不食」というブログの「セミリタイアするにあたって影響を受けたブログ5選」という記事にたどり着き、どうやら日本には、特段大きな資産を築いたわけではなくても、40歳前後で引退して節約生活(といえば聞こえは良いが、多くは極貧生活)に入る人や、そうした節約型早期リタイアを目指している人が結構いるということを知った。

昔からこうした人はいたのかも知れないが、多くの人がネットでその生活を紹介しているのは、節約型早期リタイアとネットの親和性が高いからだろう。こうした人の多くは、リアルの人付き合いをあまり好まない一方、ブログなどをつける時間は十分ある。また、そうした生活を紹介する事でアフィリエイターとして若干の収入が得られるというのも大きそうだ。

mushoku2006さんの「年間生活費100万円! 36歳からのドケチリタイア日記」の生活費内訳を見ると、その節約の凄まじさが分かる。月の食費は9千円、食べ物はほぼ、食パン、豆、卵、トマトジュース、もやし、サバ缶、たまに安い肉だけという感じである。この方は、年間の生活費を100万円に抑えることを目標にして9年ほど前にリタイアしたようだ。

他の国にこういう人がどれくらいいるのかは知らないが、米国で暮らしている感じでは、周到な計画を立ててそういう生活を目指している人はあまりいないように思う。日本にそうした人達が多くいる背景は何なのだろうか。

1.なぜそこまでして早期リタイアを目指すのか

まず考えられるのは、日本の職場の労働環境が厳しいことだろう。上司や顧客からのプレッシャーが大きいとか、労働時間が長いということもあるだろうし、そもそも、会社自体が共同体としての役割を果たす日本企業の文化が、生まれつき肌に合わないという人もたくさんいる。

もう一つは、失礼を承知で言えば、節約型早期リタイアを考える人達は、思考回路としてはコミュ障とか引きこもりと呼ばれる人に似ていることだと思う。そうした人は、生活上必要ならば常識人として振る舞うこともできるという器用さを持ち合わせているものの、できればそうしたくない、そのための苦労を厭わない、という考えを持っているようだ。これは、日本の労働環境が厳しいということの裏返しでもある。

社会制度の観点から大きいと思うのは、福祉制度を格安で利用できるという点である。一番大きいのは、国民健康保険の存在だろう。自治体にもよるが、所得がなくなれば、保険料は年間で2万円ほどで済むケースが多い。介護保険や後期高齢者支援金を入れても、年間4万円程度だろう。国民年金も所得がゼロなら全額免除が通る。また、貯金が底をついても、その時働けないほど高齢者になっていれば生活保護も需給可能だろう。国保はともかく、介護保険や国民年金は高齢者以外にとっては極めて不公平感が強い制度であるし、生活保護も同様だが、早期リタイアによってこうした問題は一挙に解決して得する側に回ることになる。

例えば米国では、仕事を失うのと同時に健康保険を失うのが通常だ。65歳以上になれば国が提供する高齢者用保険のメディケアに入れるが、それまでは、一部の富裕層を除く大多数の人にとって仕事を辞める選択肢は事実上ない。

更に言えば、その他の行政サービスも時間のある無職者の方が大きな恩恵を受けられる。公立図書館は無料で利用出来るし、市民館やコミュニティーセンターなども思う存分使える。忙しいビジネスマンが、駅前の本屋で本を買い、スポーツクラブで汗を流すのを横目に、ほとんど同じサービスを格安で受けられる。

こう考えていくと節約型の早期リタイアとは、当事者が意識しているか否かにかかわらず、いまの社会の仕組みに対するアンチテーゼになっているといえる。


2.節約型早期リタイアのデメリット

こう書いていくと節約型早期リタイアはいい事ばかりで、まさに日本では「働いたら負け」なのではないか、とも思えてしまうが、良い事ばかりではない。もちろん、「張り合いがなくなる」とか「時間を持て余す」などという意見は、早期リタイアを目指すような人にとっては百も承知だろうから、大した障害にはならないだろう。しかし、早期リタイアを不利にするような社会の仕組みも確実に存在する。

経済的な面で言えば一番大きいのが年功序列賃金だろう。節約型早期リタイアは、かなり周到な資金計画が必要だが、伝統的な日本の組織の賃金制度は年功序列なので40歳そこそこで退職すると「一番安月給で働かされる時期」だけ働く事になる。これは、早期リタイアを諦めさせる経済的要因としては一番大きいだろう。

もう一点は、無職者に対する社会的な風当たりが強いことだ。例えば、借家を借りるにしても無職者では断られることもある。もちろん、米国などでも借り主の支払い能力は審査されるが、あくまで大事なのは支払い能力であって、無職で信頼できないからダメという埒のあかない状況とは違うように思う。無職者に対する風当たりの強さをもっと観念的に表しているのは、日本が社会主義国でもないのに憲法に「勤労の義務」がうたわれている事である。

3.いざ節約型早期リタイアを目指す方に

さあ、デメリットも考慮した上で「働いたら負け」の信念は変わらず、いざ節約型早期リタイアを決心したとしよう。「資産の確保」と「住居の確保」は、現実的な二大経済問題だ。これに関して私の提案は以下のようになる。

(3-1) 「資産は全力で積極運用せよ」

資産運用の基本は「取れるリスクは取れ」ということだ。高齢で働くことができず、虎の子の1千万円で5年暮らさなければならないというような状況ではリスクを取れないが、20代でこれから収入がある人なら全財産を失ってもやり直しがきく。早期リタイアは、まさに「働けるけど敢えて引退」を目指しているのであるから、「働けるけど」というオプションの価値を活かして、全力でリスクを取るのが合理的である。私なら大半を株式で運用するだろう。その結果、財産の大半を失ってリタイアが遅れる可能性があっても、5年分の唯一の生活費を投資で溶かしてしまった老人よりは、ずっと状況が良いということだ。

リタイア後はどうであろうか。さすがに引退前よりは保守的にならざるを得ないだろうが、依然として積極サイドにふった運用をすべきであろう。一つの理由は、若いうちは再度働くというオプションが残されていることだ。実際にそうなればかなり憂鬱だろうが、それでも「無一文で働けない老人」よりもずっと状況は良いはずである。もう一つの理由は、死ぬまでの期間の長さだ。資産運用の結果は投資期間が長いほどならされるので、最終的にその方が得になることが多い。

そもそも、例え早期リタイアしたとしても経済は常に変化する。物価の変化や社会制度の変更のリスクは、個人ではどうにもできない。したがって、いずれにしてもある程度のリスクを勘案してリタイア時の資金計画をつくることが必要であり、リスクを取らないことよりも、経済イベントに応じて計画を変更していく方が重要である。そして、計画全体の期間が長いほど、穏やかな計画の変更によって対処できるはずである。

(3-2) 「家は買うな」

毎年の支出を考えれば、地方に格安の不動産を買ってそこに住むことで家賃を浮かせるというのは魅力的な手段に映る。実際、格安リゾートマンションで生活しているという人もいるようだ。しかしこれはお勧め出来ない。早期リタイアという超長期の計画の中で考えると、日本の不動産は値下がりする可能性が極めて高いからだ。現状の日本政府のポリシーミックスでは、長期的に価格が維持出来る可能性があるのは、東京23区とその周辺等ごく一部の環境の良い住宅地に限られる。さらに、仮に購入価格が格安であってとしても、その不動産にいつまでも正の価値があるとは限らない。百万円で買ったマンションの管理費や修繕積立金が上がり続け、買い手がつかないまま、これらの費用や固定資産税を払い続ける、というハメになるリスクも低くない。また、建物が老朽化して建て替えになった時のリスクも大きい。

無職者の賃借が難しいという点を勘案しても、あくまで住宅の購入は最終手段と考えるべきで、「賃貸+株式などの資産運用」が、「もっとも勝てる可能性の高い」ポートフォリオと言えそうだ。


さて、他の人よりずっと早く仕事のストレスから解放される「節約型早期リタイア」について一通り見てきたが、その魅力はどうだっただろうか。

個人的には、(既に30代後半で時遅しという点を抜きにしても)「うーん、僕は遠慮しておこうかな」という感じであった。
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コメントの投稿

非公開コメント

No title

早速拝見させていただきました。
しっかりとした分析だと思います。
私のブログでも改めて紹介させていただきます。

No title

追記:

この記事を書いた当時は、
確かにそのような予算だったんですが、
最近は資産も増えたし、
かなり生活費が増えています。
ブログタイトルが嘘偽りになっちゃいそうです。

No title

積極的な「ゴール」として目指さなくても
消極的な「逃げ道」(の一つ)として準備しておくのもいいかと思います。
私の場合は逃げですがw

No title

mushoku2006さんのブログ経由で来ました。
早期リタイアブログ関連の議論がほとんど盛り込まれていて、素晴らしいと思います。

冷静な分析です

過不足ない指摘のブログ記事、とても参考になりました。年功序列型賃金のメリットを捨てる件については、拙ブログでもとりあげております 。なおmushoku2006さんのブログは私もよく拝見しており、私からみれば破天荒ともいえるローコストな生活にいつも刺激を受けております。

No title

mushoku2006さん:

コメントありがとうございます!貴ブログでの当エントリーの紹介もありがとうございました。リタイア後も資産運用や不労所得でより豊かになるという幸運もあるのでしょうね。近年は株高ですし。

retire2kさん:
早期リタイア、考えるだけでも楽しいですね。基本、私も働くのは嫌いですし(笑)。

さいもんさん:
ありがとうございます。節約型の早期リタイアは最近知りましたが、持ち前の妄想力で頑張って書きました。


みなさまのブログも、時々拝見したいと思います。楽しみにしております。

No title

WATANKOさん

お返事遅れました。ブログも拝見致しました。
節約型早期リタイア組と資産家の違いは何か、というのも考えさせられます。

No title

面白かったです!!
日本人って、賢いですよね、まあ、この場合、いい方に、っていうのではないような気がしますが。行政にとってもGDPに取っても。。。

うちの夫はわりと真面目にまあ、40代では無理でも、できれば50代前半でのリタイヤを夢みています。でも、わたしは極貧生活はゴメンですから、なるべく引き伸ばさせる予定ですが。運用は株ですよね。で、もし暴落したら、リタイヤしないで働くからいい、と夫も言っています。定期預金じゃいつまでたってもお金は増えませんよね。。。。

ただアメリカには医療費の問題がありますよね。うちの義父母は52歳でリタイヤして毎月1000ドル以上保険料を払っていました。一度リタイヤして家も引っ越したあと、保険を狙って1年半くらいちょこっと働きました。65歳でメディケイドを使えるようになっても、ギャップ保険とかいうのが必要なんですよね。まあ、それまでの保険に比べたらずっと安いですけど。55歳でリタイヤしても10年はたかーい保険を払わねばならない・・・。

となると、日本に移住した方がお得かな、とか。しかし、今後日本の社会とか医療制度とか色々どうなるかわからないですけどね~。








No title

かきつばたもこ さん

おっしゃる通り、米国だと準富裕層でも健康保険の問題で早期リタイアに二の足を踏むというケースが多いようです。従って、これまでは基本的に医療環境の良い国に移住というのが最有力の選択肢の一つでした。

しかし、オバマケア(ACA)が導入されてから、低所得者向け保険Medicaidの要件が緩和されたり、低中所得層の健康保険購入に補助金が出たりするようになり、アーリーリタイアは以前に比べてやりやすくなっているようです。現在では、低所得者向けMedicaidの要件は収入のみで資産テストは影響しないようですし。

しかし、ACAは1年半ほど前に施行されたばかりですし、早期退職者の優遇はいわばループホールですから、今後どうなるかは予断を許しません。

全く関係無いですが、今年で65歳になった父親にいつも働いていてくれてありがとうと言いたくなりました。

No title

少子高齢化の時代なのでそもそも今の現役世代はリタイアできなさそうですね。
一生働く事になりそう

No title

名無しさん

これはそのうち書こうと思っているのですが、米国では退職生活を送る資金が足りない人が多く、健康でなくても食べるために働かざるを得ないというお年寄りが今後急増すると思います。私は米国で403b(401kに似た仕組み)に入っていますが、金融機関の出すリタイアメントプラニングの想定利回りが7%とかなのです。この利回りは今後達成されそうにありません。つまり「計画的にプロのアドバイスを聞いて退職に備える」程度では老後は破綻し、「プロのアドバイスを疑うほど用心深い」ほんの一部の人だけが予定通りリタイアできるようになるのではないかと思います。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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