高齢者がアメリカに住むのは大変だと実感した出来事
今朝、シャワーを浴びた後で朝食を食べようと一階に下りると、妻が
「もう聞いてよ!朝から大変だったよ。」
と話しかけてきた。なになに?と思って話を聞いてみると、コンドミニアムの向かい側のユニットに住んでいるお年寄りの女性が膝を痛めて歩けなくなり、這って助けを求めに来たそうだ。彼女はずっと一人暮らしで、親戚や知人等が訪れてくるところも見た事がない。年齢は70歳前後だろうか。5年前に我々がコンドに越してきた頃はずいぶん元気そうだったが、2年ほど前に病気で入院した際にずいぶん痩せて近所を心配させていた。その後、病気からは回復して元気になったように見えたが、最近は体重が増えたせいか、膝を痛めたのだろう。
彼女は「運転はできるから、駐車場まで歩くのを手伝って欲しい。」と妻に頼んできた。距離は20〜30メートルくらいだろうか。私が手伝えれば多少は良かったのだが、たまたまシャワーを浴び始めたところだったので、妻は「今、夫はすぐには来れないので、私がやります。」と言って体を支えて何とか車まで連れて行った。途中でバランスを崩して一度倒れてしまい、妻はアザまでできてしまった。妻は妻で大変だったが、その女性も歩けない体で運転して病院まで行くのはかなりに大変だっただろう。無事に病院までたどり着いていれば、病院の車寄せから助けを呼んだのだろうと想像される。
実は彼女は、2〜3ヶ月ほど前にもどこかを痛めて歩けなくなったことがあり、救急車が来ていたことがある。意識はしっかりしていたし、助けがあれば何歩か歩くことはできたので、今回と同じような状況だったように見えた。何故今回は、救急車を呼ばなかったのだろうか?
その答えは、9割方明らかである。救急車を呼ぶのにお金がかかるからだ。そのコストは地域差や移動距離による違いはあるものの大雑把に言って、500〜1000ドルくらいと言われている。確かによほどのことがない限り、庶民が自腹で払おうと思える額ではない。
健康保険はないのだろうか。米国の65歳以上のお年寄りの多くは、国が提供するメディケアと呼ばれる保険に入っている。いわば、65歳以上限定の国民皆保険制度である。しかし、医療価格が日本の5倍とも7倍とも言われる米国では、メディケアの財政は急速に悪化しており、保険がカバーする範囲は最低限に抑えられている。救急車を呼んだ場合の自己負担は20%となっているようだが、保険が適用されるのは心臓発作を起こしたとか、大事故に遭って出血多量というように生死に関わる緊急の場合に限られる。
そう考えていくと向かいに住むその女性の状況は、大体想像がつく。数ヶ月前に膝を痛めて歩けなくなり救急車を呼んだ。入院して治療を受け家に帰ったが、後にその救急車の費用が全額自己負担になると知って仰天したのだろう。今回タクシーすら呼ばずに自分で運転していくことを選んだ事を考えると、かなり経済的に困窮しているのかも知れない。
彼女のような状況は決して珍しくなく、むしろ米国で一人暮らしをするお年寄りの典型的な姿だろう。経済レベルは中の下、下手をすれば中の中くらいなのかも知れない。古くて小さなコンドミニアムとはいえ持ち家があり、新車をリースし、元気だった4年前にはイタリア旅行に行く、と1週間あまり出かけていたこともある。物腰も柔らかく、そんなに貧しい生活を送ってきた人のようには見えない。
米国の医療制度に関しては、国民皆保険でないことが話題にされることが多いが、自由価格の制度のもとで医療費が異常に高騰した米国は、もはや皆保険が達成されただけでは、どうにもならないところまで来ているというのが実態なのだ。




「もう聞いてよ!朝から大変だったよ。」
と話しかけてきた。なになに?と思って話を聞いてみると、コンドミニアムの向かい側のユニットに住んでいるお年寄りの女性が膝を痛めて歩けなくなり、這って助けを求めに来たそうだ。彼女はずっと一人暮らしで、親戚や知人等が訪れてくるところも見た事がない。年齢は70歳前後だろうか。5年前に我々がコンドに越してきた頃はずいぶん元気そうだったが、2年ほど前に病気で入院した際にずいぶん痩せて近所を心配させていた。その後、病気からは回復して元気になったように見えたが、最近は体重が増えたせいか、膝を痛めたのだろう。
彼女は「運転はできるから、駐車場まで歩くのを手伝って欲しい。」と妻に頼んできた。距離は20〜30メートルくらいだろうか。私が手伝えれば多少は良かったのだが、たまたまシャワーを浴び始めたところだったので、妻は「今、夫はすぐには来れないので、私がやります。」と言って体を支えて何とか車まで連れて行った。途中でバランスを崩して一度倒れてしまい、妻はアザまでできてしまった。妻は妻で大変だったが、その女性も歩けない体で運転して病院まで行くのはかなりに大変だっただろう。無事に病院までたどり着いていれば、病院の車寄せから助けを呼んだのだろうと想像される。
実は彼女は、2〜3ヶ月ほど前にもどこかを痛めて歩けなくなったことがあり、救急車が来ていたことがある。意識はしっかりしていたし、助けがあれば何歩か歩くことはできたので、今回と同じような状況だったように見えた。何故今回は、救急車を呼ばなかったのだろうか?
その答えは、9割方明らかである。救急車を呼ぶのにお金がかかるからだ。そのコストは地域差や移動距離による違いはあるものの大雑把に言って、500〜1000ドルくらいと言われている。確かによほどのことがない限り、庶民が自腹で払おうと思える額ではない。
健康保険はないのだろうか。米国の65歳以上のお年寄りの多くは、国が提供するメディケアと呼ばれる保険に入っている。いわば、65歳以上限定の国民皆保険制度である。しかし、医療価格が日本の5倍とも7倍とも言われる米国では、メディケアの財政は急速に悪化しており、保険がカバーする範囲は最低限に抑えられている。救急車を呼んだ場合の自己負担は20%となっているようだが、保険が適用されるのは心臓発作を起こしたとか、大事故に遭って出血多量というように生死に関わる緊急の場合に限られる。
そう考えていくと向かいに住むその女性の状況は、大体想像がつく。数ヶ月前に膝を痛めて歩けなくなり救急車を呼んだ。入院して治療を受け家に帰ったが、後にその救急車の費用が全額自己負担になると知って仰天したのだろう。今回タクシーすら呼ばずに自分で運転していくことを選んだ事を考えると、かなり経済的に困窮しているのかも知れない。
彼女のような状況は決して珍しくなく、むしろ米国で一人暮らしをするお年寄りの典型的な姿だろう。経済レベルは中の下、下手をすれば中の中くらいなのかも知れない。古くて小さなコンドミニアムとはいえ持ち家があり、新車をリースし、元気だった4年前にはイタリア旅行に行く、と1週間あまり出かけていたこともある。物腰も柔らかく、そんなに貧しい生活を送ってきた人のようには見えない。
米国の医療制度に関しては、国民皆保険でないことが話題にされることが多いが、自由価格の制度のもとで医療費が異常に高騰した米国は、もはや皆保険が達成されただけでは、どうにもならないところまで来ているというのが実態なのだ。
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