スポンサーサイト -- このエントリーを含むはてなブックマーク

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


【就活】採用担当者が志望動機なんて聞いてどうすんの? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先ほどツイッターに

と投稿したところずいぶん反響があったので言いたいことをまとめておきたい。

日本の「シューカツ」においてはその企業への「志望動機」とやらが依然として重視されている。リクルートキャリアの就職白書2015によると、78%の企業が採用基準で重視する項目として「その企業への熱意」を選んでおり、その比率の高さは全項目中で堂々の2位になっている(ちなみに1位は「人柄」だそうだ)。

リクルート

確かに応募者が持っている「この職種につきたい」とか「この業界で働きたい」という希望を聞くことには合理性があるだろう。しかし、特定企業へのこだわりを重視することにどれほどの意味があるのだろうか。私も学生時代に就職活動をしたので各企業への志望動機は必死に考えた。しかし、フルタイムで何年か働いてみて感じることは、学生の頃に抱く企業へのイメージなど大した意味はなく、実際にそこで働いて見なければ実体は分からないということだ。そもそも同じ業界・同じ職種で、企業によってそこまで個人との相性があるかどうかは定かでないし、ましてやそんなことを外部から判断できるとは思えない。

そもそも採用側と応募者側の間には、募集するポジションと応募者とのマッチングに関して大きな情報格差があって、採用側が圧倒的に多くの情報を持っている。新卒の場合にはその差は特に大きい。採用側は、自分の会社なり組織にどんな業務があり、従業員がどのような条件で働き、どの部署でどんなタイプの人が活躍しているかを知っている。したがって、応募者が採用された場合にどういったところで活躍できるかかなりのところまで予測できる。一方、応募者の方は例え企業研究などをした所で非常に表面的な事しか分からない。採用側はそんな「素人」に自社の職場への空想コメントを並べてもらって何がしたいのだろうか。

もちろん、面接官が応募者に
「なぜ弊社を希望したのですか?」
と聞くのは別に悪いことではない。例えば技術系の職種であれば、その企業でやっている特定分野の開発に興味があるのかも知れない。また、横浜に住んでいる人がわざわざ岩手県の会社に応募したら、志望動機は何なのか採用担当者は気になるだろう。だが、ほとんどの応募者は、大まかな志望業界や特定の職種への関心があり、それに当てはまる企業をいくつか受けてみるという感じではないだろうか。それは別に排他的な選択をした結果ではない。

具体的に考えてみよう。損保会社で志望動機を聞かれた学生が、
「保険の新分野の商品開発に興味があるので損害保険会社で働きたいです」
と答えたとする。それに対して、
「なぜ他の損害保険会社ではなく弊社を希望するのですか?」
と重ねて質問するような採用担当者がいたら、
「冴えない面倒くさい面接官だな。」
と私なら思う。
会社案内を読んだくらいでは、損害保険会社の商品開発をする上で会社によって職場環境がどのように違うのかまで知ることは不可能だ。業界トップ企業なら待遇は良いかもしれないが、そんな自明な事を応募者に聞いてどうするのだろう。そこは、採用担当者が自分の会社をアピールして応募者に来たくなるようにさせるのが本来やるべきことだ。志望者を増やして採用側が損する事は何もない。

こんな愉快な話もある。私が日本の学生時代に、後に働く事になる職場に応募した際、リクルーターの方に「なぜこの会社に就職したのですか?」と質問してみた。するとリクルーターは「就職課に置いてあった応募ハガキの山のてっぺんから3枚取って応募しました」というのだ。3社とも名の通った企業ではあったが、業種も職種もバラバラだ。私はこの話を額面通りには信じていないが、今考えると就職活動に対するその人の精一杯の皮肉だったのではないかとも思う。

私は英語圏数カ国で就職活動をして、大学も企業も受けに行ったが「どうしてこの業界の中でウチに応募したのか」などというナンセンスな質問を英語で受けたことは一度もない。みな、その職場で働く事がいかにハッピーで素晴らしいかをアピールし、ほとんど見込みがなくても「君には是非来て欲しい」とラブコールを送るのだ。また、職場に採用候補者が訪れた時にそんな質問をしたこともない。採用するつもりで呼んでいるのだから、そこで自分の職場をアピールできずに無意味な質問で採用候補者を追い込めば、アンプロフェッショナルな印象すら与えかねないからだ。日本の「シューカツ」は世界の常識からはかけ離れている。

それでも日本企業の採用において「その企業への熱意」という不思議なものが重視され続ける理由は、もっと残念なところにあるのではないかと思う。

1つめは、内定者が辞退した時に人事部の採用担当者が責められるということだ。採用担当者としては、第一志望の可能性の高い候補者の方が安心だ。しかしそれは責任逃れをしたい人事担当者の私利私欲のためであって、実際に人を獲得する現場の職員は少しでも職務遂行能力の高い人を欲しているのではないだろうか。

2つめは、思い詰めた人を採用すれば多少の無理を押し付けても文句を言わず一生懸命働くだろう、という安心感だ。一生懸命やりさえすれば利益が出た冷戦時代の名残とも言えるし、ブラック経営の兆候とも言える。

3つめは、自社をアピールするための手法として利用出来ることだ。「我が社はこんなに凄いんです」とアピールすれば誰もが怪しむが「我が社の凄い点を考えてください」と言えば(結論は所与なのに)自分で考えたような気になり、納得感が高まるのだろう。宗教が、繰り返し信者に修行をさせて忠誠心を高めさせるようなものだ。

いずれにしても、まともな労働環境の職場を作るのに「企業への熱意」とやらが好ましいとは思えない。

もう、採用候補者に意味のない質問ぶつけて疲弊させるのは止めてはどうだろうか?

それとも、「キチョハナカンシャ」の次は「オンシャシャフーマッチ」でも流行らせますか?
スポンサーサイト


コメントの投稿

非公開コメント

ただし文系学部に限る

実務経験ゼロで何の専門性も持たない日本の文系学部卒業予定者をどう評価すれば良いのか?ということなのでしょうね。医薬工学部(ただし国立大学に限る)の卒業予定者でその専門分野の職業に就こうとしている場合は、また話が別なのですけど。

新卒採用を人事部が担当している理由もそれで、たしかに現業部門の人間に評価しろといわれても困るということになります。日本企業でも中途採用については現業部門が採用を担当することが多く、その結果として実務未経験者が採用されることはほぼないわけです。新卒で就職できないと格段に就職が難しくなる理由でもありますね。

No title

IGさん

同意です。

また、正確に評価しようのない人材に一生分の給料を保障するという雇用システムでは、正社員ポストが過小供給になってしまうのも必然でしょうね。

「人柄」

人事部の採用担当者としては、前例どおりにやりさえすれば、とがめられることもなく、優れた質問や説明を調べたり考えたりする手間も省けて、一石二鳥ではないでしょうか。(人事畑の人は個人の好き嫌いでしかない「人柄」を持ち出したがる印象があります。職務遂行能力が低い人を褒めるときに「人柄」は便利な言葉ですね。)

No title

zさん

そうですね。「人柄が良い人を採った」と言えば、使えない人でも後からいくらでも言い訳できますからね。人事の打算的な事情で翻弄されている学生さんたちが気の毒です。

新卒一括採用に問題あり?

 文系に専門性がないと書かれていますが、大学在学中に苦労して弁護士、司法書士、公認会計士、税理士と高度専門職の資格に合格したホルダーを法務、経理などの専門業務に雇う企業は、日本では、皆無です。
 また理系では、医薬などの学部でとれる国家資格、学位には、価値があると思いますが、工学部で取得できる電子工学、冶金学、化学とか、そんな転職に不自由な専門を持ったってエンジニアにも上中下と階層があるのに意味があるのだろうか?実務経験も一つの会社だけでしか通用しない特殊技能なので断る理由にしかならない。

人柄のよしあし

Willyさんのおっしゃる「「人柄が良い人を採った」と言えば、使えない人でも後からいくらでも言い訳でき」るというのは、その通りだと思います。

「人柄」が良いと言われがちなのは仕事ができない人、「人柄」が良くないと言われがちなのは仕事ができる人という傾向があるのかなと感じます。

友人らから聞く話では、「あの社長の"人柄"に賭ける」などと言って意思決定を正当化したがる人も会社によってはいるようで、中々大変そうです。

No title

zさん

そうですね。他の人に築けないくらいの人脈を築ける人柄ならビジネスにもプラスでしょうが、「何となく憎めない」くらいの理由で人事を決めてもらっては周りが困りますね。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

検索フォーム
Twitter

Twitter < > Reload

お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

全記事表示

全ての記事を表示する

最近のコメント
訪問者数 (UA)
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
海外情報
35位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
北アメリカ
6位
アクセスランキングを見る>>
人気記事Top10


(はてなブックマークより)

カテゴリー
最近のトラックバック
お勧めブログ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。