20代後半が忙し過ぎる件 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

某掲示板「大学院卒業後の進路について悩んでいます」というトピが掲載された
(ちなみにこれは以前の炎上したトピとは違い、私の投稿ではない)。

その内容は、
「22歳の女子大生だけど、修士課程に3年間通って25歳で就職したい。
一方で、いま社会人の彼との結婚や出産は20代でしたいし、
就職したら3年くらいは働いてからでないと仕事も休みにくい。どうしたら良いか?」
というもの。
計算上は最短で28か29歳で出産可能にはなるがそれでもギリギリだ。
他はどの部分も現在の日本の社会常識に照らし合わせて、
ごくごく一般的なもので疑問を挟む余地はあまりない。
あなたがこの相談を受けたらどんなアドバイスをするだろうか?

この相談は少なくとも読者に、
現代の20代後半の人生設計がいかに慌ただしいかという事を理解させる。

例えば相談者の親世代が20代だった30年前であれば、
人生設計上の時間はもっとゆっくり流れていたはずだ。
女性であれば短大を出て20歳で就職。
そのまま同じ会社に何年か勤めて、社内恋愛やお見合いで結婚して寿退職。
20代での出産を考えても、時間は10年近くあった。
一浪して大学を出た男性であっても23歳で就職。
仕事は忙しくても人生設計上でやらなければならないことは結婚くらいだった。
結婚後に転勤があっても、妻もついて行けば良いだけだった。

それと比べて最近20年間の20代後半の人生はどうだろうか。
男女を問わず、修士課程を出てから就職することも珍しくなくなった。
むしろ理系に限れば修士を出ていないと就職でやや不利になることも多い。
すると、現役でも24歳、浪人や留年をすれば25歳以上で就職だ。
しかも就職後は、英語やコンピューターなど個人レベルで
磨かなければならないスキルが格段に増えている。
キャリアアップのための留学や、海外転勤、転職も一般的になり、
その準備や新しい環境への適応には時間がかかる。
お見合いは減り、合コンや街コンを使えばマッチングや
恋愛から結婚に至る迄のプロセスにも時間がかかる。
結婚して共働きなら、転勤は大きな問題になる。
前の世代が当たり前にやっていた20代での結婚や子づくりを
するだけでも、難易度が数レベル上がっているのだ。

私自身も十数年前に24歳で就職して、
28歳で結婚、留学、29歳の時に娘が生まれたが、
怠惰でのんびりした自分の人生の中でも
20代後半は目の回るような忙しさだった。
とても充実した20代後半ではあったが色々と運に恵まれた面も大きい。
大多数の人が、同じスケジュールで人生設計を進めることができるとは
思えないほどのスピードだった。

あまりに大変になりすぎた20代後半の生活を想像して
「恋愛は面倒」「結婚は後にしよう」「子供はもう少し待とう」
「留学はやめよう」「海外には行きたくない」
「転職しなくても安定した職場の方がいい」
などと考える若者が増えるのは当然のことのように思える。


話題を元に戻そう。
22歳の女子大生の願いを叶えるにはどうすれば良いだろうか?
私の答えは単純で「やりたいと思ったことをすぐにやる」というものだ。
彼女が願いを叶えるための最短経路は、

来週:結婚

来年:出産、子育て

25歳:就職

である(もちろん結婚は相手がいるので合意が必要だが)。
実際、このような人生設計は米国では別に珍しくもなんともない。
20代後半の生活が忙しくなっているのは日本だけでなくどこの人でも同じなのだ。

日本でそうした決断を阻んでいるのは、社会の伝統的な価値観だ。

「大学院生は研究に没頭すべき」
「学生はまだ半人前だから結婚すべきではない」
「ましてや学生で出産や子育てなどすべきでない」
「新卒以外は正社員として採用しない」
「25歳を超えた新人など教育しにくい」
「新人は育児休暇など取るべきでない」
「育児休暇は1年間は取りたい」
「結婚はお金がたまってから」
「結婚式の準備には1年間必要」
「子供は3歳まで母親が全面的に面倒を見るべき」

こうした価値観を個人が持つのは自由だが、
少なくとも社会全体で押し付けるべきではない。

日本の若い人の足を縛っているのは、日本社会の伝統的な価値観だ。
イクメンがどうとか、3歳まで抱っこし放題とか、
そういう運動は窮屈な価値観を更に増やして逆効果のように思われる。
日本社会が目指すべきは、

「いろいろな価値観を認める」
「伝統に縛られない」
「失敗してもやり直せる」
「何歳になっても挑戦できる」

という気楽に前向きになれる社会ではないか。
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テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

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母親が子供を育てる必要はない

進学と就職と結婚と出産と子育ては、それぞれ分離できます。
結婚せずに出産子育てしてもいいし、結婚出産して、子育ては養子縁組や児童養護施設でやってもらうこともできる。
全部をフルセットでやる義務はないし、法律で強制もされてません。

大学院在学中に出産したっていい。
数ヶ月だけ休学すればいいじゃないですか。
出産した後は乳児院に預ければいい。

つまり、人生のイベントを、誰かが決めた順序で行う必要はなく、順序の入れ替えができるし、平行して進めることも可能でしょう。

No title

inoueakihiroさん

おっしゃる通りです。

大学院を途中で休学して子供を生むのは当然考えられます。私の院生時代の同級生はTAをして生活していましたが、他のTAと協力して、学期の前半は2クラス分の授業を教え、後半は別の人に2クラスとも教えてもらうことで、まったく仕事のギャップなしに子供を産んでました。大学卒業して1年間子育てした後に就職するとか、会社に入ってすぐに出産してから翌年に新人として働き始めるとかいろいろあって良いと思います。

婚外子ももっと増えてもいいはずですし、男性は子供をもうけるために最初は男女で結婚して生まれたら離婚して同性婚するとか、一般的には男m人と女n人で結婚することも考えられると思います!

No title

生物としては妊娠出産は20代に済ませた方がいいのがどうやら真実なので,
【学部卒→結婚・妊娠・出産→大学院で学び直し→社会進出】みたいなキャリアも広く受け入れられればいいと思うし,そうすればうちのような弱小大学院も「学び直しの機会提供」という生き残る道が拓けそうだと,日々ぼんやり思っております.

若いときにわがままを通しておくべき

我慢を強いられるのは年を食えばいつでもできるので、若いときにわがままを通しておくべき、と思います。しかし、日本社会の伝統的な価値観は強烈すぎますね…

No title

カメさん

そもそも新卒一括採用&終身雇用という仕組みは時代に合っていないのみならず、初めから女性の事は全く考えてないような仕組みですしね。大学院での再教育も広がると良いですね。

zさん

自立する前の若い人は親の影響を受けて保守的な価値観を持っていることが多いという報告もありますし、若者自体も伝統的価値観をうち破れるように意識する必要がありそうです。

千差万別

妊娠、出産と人それぞれですよ。修士号、就職、男、出産、どこの国もいいとこ取りはできません。就職なんかは、文系なら大学に関係なく、この日本では一切ありません。

No title

ゴーディアンさん

>修士号、就職、男、出産、どこの国もいいとこ取りはできません。

どちらの国にお住まいですか。米国だと全部やってる人は別に珍しくないです。

千差万別2

>やや舌っ足らずな書き方で誤解を与えましたが、日本の硬直的で一元的な新卒採用に関しては、同じ意見です。私は、willy氏のようにアメリカ滞在経験はありません。過去にネイティブ日本と英国で3年のみ仕事で滞在した経験があるだけです。もちろん英国、EUでも米国同様、仕事、学歴、出産、女のキャリアと日本のような閉塞的な状況ではありません。
 
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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