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留学や海外就労で人生リセットはできません -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本での留学・海外就労についての相談やアドバイスを見ると、「今の生活に行き詰まりを感じてるので留学したい!」、「人生リセットしたいなら留学がベスト!」などという意見を目にするのだが、十数年アメリカに住んだ経験からすると、この手の考え方は的外れどころか全く逆だ。むしろ、留学や海外就労を目指す場合、これまでの自分の経験に縛られることが増える。

1.語学のハンディと自分の強み

海外で語学のハンディを乗り越えるには自分の強みを活かすしかない。私が米国で就職するに当たり、18歳以上になってから経験した事で無駄になったことはほとんどない。数学科で6年間を過ごした事は数学科で働く上でもちろんプラスになっているし、教えるのが好きで予備校で講師を経験した事は、大学で授業する上で最も役に立っている。日本でモデリングや統計の仕事をしたことは、自分のリサーチのみならず、学生にトピックを与えて指導する上でも非常に役になっている。米国での就職では学位も重要になってくるし、持っている学位や分野、日本での就労経験によって取れるビザも違ってくる。更に私は、米国で就職活動する際に、日本で知り合いの大学教授から推薦状をもらった。海外では、自分が確かな人間であることを示すために、これまでのスキルや人の繋がりがとても重要になってくる。

日本でもスキルや人の繋がりはもちろん重要だが、語学や文化的なハンディがない分、過去の自分を断ち切って仕事を探す事はずっと容易だ。私は、日本の大学院では落ちこぼれだったので修士課程の後に就職活動をしたが、基本的にはどの会社も学部2年くらいまでの専門知識以外はほぼポテンシャルだけで内定を出してくれた。中央省庁の中には、公務員試験の名簿を使ったのか「大学院を中退してうちに来ませんか」と言ってくれたところもあった。米国に来てから、これはとても贅沢なことだったのだと感じている。

私が日本で就活した当時は、新卒カードという強力な武器があったのは事実だ。しかし、それを差し引いても、日本人が日本で新たな仕事にチャレンジするのは、米国で新たな仕事にチャレンジするよりもずっと容易だ。私も少し歳を取ってしまったが、今から全く違う新しい仕事、例えばマクドナルドのバイトから店長を目指したり、カーディーラーに入って車のセールスマンを目指すにしても、米国よりどの国より、日本で挑戦するのが一番成功する可能性が高いと思う。

もし人生をやり直したい日本人がいたら、日本でやり直す方がずっと簡単だし、これまでのしがらみを断ち切るのも易しい。


2.海外の日本社会はとっても日本的

もし、特筆すべきスキルはないがどうしても海外で働きたい、ということになれば、必然的に自分の日本人としてのスキル、すなわち、日本語がしゃべれるとか日本文化が分かるという強みを活かす事になる。そうしたポジションの大半は日系企業の現地採用だ。

日系企業は米国にも日本文化をそのまま持ち込んでいるので非常に日本的だ。米国に多い伝統的な製造業大企業はたいてい日本的だし、現地化した日系サービス業などは昔の日本的価値観を強く引きずっていてブラックだったりする。「日本に帰りたくない」という日本人は人気のある大都市では常に一定数いる(*1)ので、単純業務を行う末端労働者の労働環境は劣悪な事が多いのだ。

日本で新しくて進歩的な企業で働く方が、よっぽど人間関係も仕事もやりやすいだろう。

(*1)その点、日本人に人気のないデトロイト、シカゴ、トロント、その他日本企業が進出する中西部、南部の大都市は相対的にお勧めではある。



ネガティブなことばかり書いてきたが、それでも留学がプラスになる人もいるだろう。どういう人が海外就労や留学に向いているのだろうか。

(1) 若い
若ければ語学の吸収や文化への適応も早いし、現地就職の際のハンディも小さくなる。日本に帰ってきても25歳前後までなら新卒カードが切れるのでユニークな経験を活かして、有利になる可能性がある。

(2)年齢だけがネック
逆に専門能力は十分高いのに、年齢が高くなってしまったために日本の雇用慣行に阻まれて希望の職種につけないというケース(例えば35歳以上で非管理職など)では、海外に出た方が活路が見いだせるケースが考えられる。もっとも海外では成功しても、今度は日本に帰ってくるのが困難というケースもある。

(3)海外で需要の高い技術を持っている
理工系の技術者、研究者などは、海外では需要が高いので日本よりうまく行く可能性がある。特にIT分野では日米の賃金格差がかなり広がっているので、経済的には米国の方が得だろう。理数系の高校教員などもなり手が少ないので、今後需要が増加する可能性がある。学術的分野以外なら、おなじみの寿司職人は海外では需要が高いし、今ならうまいラーメンを作れる人なら米国で成功する可能性が極めて高い。飲食以外でも、日本人向けビジネスが見込める地域も多々ある。

(4)海外でしか学べない技術を学ぶ
例えば学問分野なら経済学。日本国内で海外での実績が評価されやすい上に、日本と英語圏諸国の実績の差がまだまだ大きい。職人分野なら、ヨーロッパで料理修行して日本に帰るなんてパターンもある。


もちろん、私の話は主に米国についてのものなので、新興国で新事業を立ち上げるとか、他にもチャンスは色々あるだろう。国際化した日本人が必要な国際機関に勤めるという手もある。ただ一言で乱暴にまとめるなら、海外で上手くいくのは「海外で人生リセット!」と明るく考える人より、色々と考えた末に「仕方ないから海外に行くか…」と考える人なのかも知れない。
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テーマ : 就職・転職・起業
ジャンル : 就職・お仕事

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海外の日本人社会の特異な状況を知らない人が多い

日本を出て視野を広げることは大変素晴らしいことですが、私も海外に出たからといって自分のこれまでのキャリアや経験がリセットできるとは思いません。むしろこれまでの経験が積み重なっていないと、諸外国で大恥をかく可能性すら感じます。

ちなみに、私も海外において長期生活を経験しています。

記事内において、海外在住者の日本人社会についての言及がありますが、私はあの独特な雰囲気には違和感すら感じます。先に赴任したものが「先輩」となり、居住日数の違いによる序列が出来上がります。私は未経験ですが、会社関係であれば、役職なども絡んでくるのでさらに厄介でしょう。

海外に出れば何かを感じることができますが、それは日本人社会はどの国に行っても存在し、切るに切れない距離に存在を感じなければならないことを痛感しました。

No title

ラテンヲタクさん:

長くいる方が偉いという考え方は、年上を敬う文化や年功序列から来ているのでしょうね。これに、長くいる事による語学力や生活力の高さ、という面が絡んでいるのでしょう。

そうした背景から、日本人の新参者は長く米国に住む日本人を避けるようになり、安定した日本人コミュニティーがなかなかできない理由にもなっているようです。

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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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