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一流大を目指すアメリカの高校生の生活 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

公立学校の学年末も近づき娘の小学校も半日授業だったので、
大学に連れて行って私がオフィスで打ち合わせをしている間、隣りで本を読ませていた。

打ち合わせをした相手は、
エンジニアリングスクールの助教授でアジア系アメリカ人の女性だ。
地元出身のようで、ミシガン大で学士、修士、博士を取って
スタンフォードでポスドクをした後、
うちの大学のテニュアトラックにのって現在に至る。

1時間ほど打ち合わせをした後、
ミシガン大に行きたいと言う娘が興味を持つかと思い、
「何か娘にアドバイスはある?」と聞いてみた。

「まだ小学生だからあまり気にすることはないけれど」
と前置きしたあと、彼女が始めに言ったのは予想通り
「高校の成績と標準テスト(SATかACT)はきちんと高いスコアを出しておいた方がいい」
ということだった。
州立大学は入学選考に一流私立ほどのリソースを割けないし公平性も重視される。
だから成績とテストスコアが重要であるというのはよく言われていることである。

しかしその後に彼女が話していた事はちょっと私の想像を超えていた。
結論から書けば、
「あとは課外活動とかいろいろあるけど時間もかかるから一生懸命になりすぎないで」
ということだ。
しかしそれは、彼女自身が高校生の時には必死に色々やり過ぎた、
という思いからのアドバイスだそうだ。
楽器やスポーツをいくつも掛け持ちし、ボランティアをして、
ナショナル・オーナーズ・ソサエティ
(勉強も社会奉仕もしてリーダーシップのある模範的高校生を認定する機関)
にも入って・・・、と必死で大学入学のために準備をしたらしい。
大体、午後10時まで学校で様々な課外活動をし、家に帰ってから午前2時まで勉強。
午前5時には起きて、朝練に行くという生活だったらしい。
さすがに大学入学後に一時燃え尽きてしまっていたという。
極端な友人の中には、自分の履歴書をよく見せようと運動部を3つ掛け持ち
している人もいたという。

米国の大学入学選考は holistic approach と呼ばれ
学力だけでなく総合的に人物を評価する。
一部ではそれが素晴らしい事のように言われるが、
一流大に行くことを切望する高校生の生活スケジュールは上のように殺人的なものになる。
一方で学力だけに力を入れる訳ではないので、
そこまでやっても学力では東大生の足下にも及ばない学生がたくさんいるのである。
こうした選考方法が望ましいのかどうかは、賛否両論があるだろう。
少なくとも、日本の大学入試を改革する際には
日本の将来を担う高校生たちにどんな生活を送って欲しいかという視点で
考えることが大切であるように思う。

彼女はアカデミアに進む選択をした今では、
「高校生のうちからそんなに殺人的なスケジュールで生活を送る必要はない」
という結論に達している。
なんでもこなした彼女の人間的な魅力は、
数学をやる以外は家でゴロゴロしてドラマとか見ていた私よりも上なのかも知れないが、
別にそれはキャリアに必須なことではない。

話が一段落して、
「ミシガン大には実家から通ったの?」
とたずねると
「最初の2年は実家からその後はアパートを借りた」
と答えたので、
「親は近くにいると安心だろうね」
と同意すると、ぽつりと
「私はボストンに行きたかったんだけどね」
と言った。
きっと、どうしてもハーバードかMITに入りたかったが、
あれだけやっても入れなかったか奨学金が下りなかったということなのだろう。
確かにそれだけの難関校を目指していたのであれば、その高校生活もうなづける。

現在、米国の大学人気トップ5は
ハーバード、イェール、プリンストン、スタンフォード、MITの5校と言われ、
「HYPSM」などと略される。
入学定員の合計は約7200名で約400万人いる米国の18歳人口の0.18%程度だ。
日本の18歳人口(約120万人)に換算するとわずか2160名となる。
日本では東大と国立医学部の定員の合計はちょうど8千人くらいなので、
HYPSMは、その約4分の1の狭き門だ。
そこを目指す高校生は、きっと上に書いたような超多忙な高校生活を送っているのだろう。

日本人も米国人も一流大学のブランドは大好きだが
そこを目指す高校生も子供を入学させたい保護者も、
大学入試にそこまでのエネルギーを使う価値があるのかどうか
よく考えてから挑戦した方が良いのではないかと思う。
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テーマ : 大学
ジャンル : 学校・教育

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ブランド大卒業証書は「幸福へのキップ」か?

今後、日本もアメリカも経済が先細る中、親がどこまで子供の教育費にお金を投じることができるのか、費用対効果を考えなくてはならないでしょう。

子供にしても、モーレツに勉強することはある意味、エネルギーと時間の「投資」です。単に有名大合格や卒業証書のためだけに頑張るわけではないでしょう。

今後、日本と世界で高学歴ワープア問題はさらに深刻になっていくと思います。

アカデミアも就活戦線は熾烈ですからね。それに、有名大の学部卒業して、大手ブラック企業に競って入って人生どうすんの、って感じます。

大学なんか、通信教育やオンライン大学で十分だと思います。金融やビジネスを専攻して人生の早い段階で働く。自分で会社を作るのもいいかもしれません。

学力も必要ですが、お金がなくてはどうしようもありません。あと、人脈やコネ。

それと将来的には、有名大学も財政難になり、背に腹かえられなくなると思います。Harvard Extension School みたいに、成績に関係なく授業料さえ払えれば誰でもハーバード大生になれます。卒業は厳しいけどね。

有名大のタイトルだけなら、お金とそこそこの学力があれば手に入りますよ。でも、それがその人を幸福にしてくれるという保証はまったくないですが。

No title

御子神金次さん:

コメントありがとうございます。
次回エントリーを持ってお返事とさせて頂きます。

2160人しかチャンスがないのですか?

HYPSMの定員で7000人程度?

18歳に絞れば2160人?

そんなに狭き門とは、知りませんでした。

定員の半分以上が指定席ですから、実際は、もっと厳しいでしょうね。

仕事は、労働市場の加減や本人の適正、または、縁故的な要素が入るので初めから厳しいですが、教育に関しては、親の努力が重要だいうことがわかりました。

米国も教育に関しては、日本、韓国以上に子供にプレッシャーをかける親が多いでしょう。

それと、米国の親御さんは、子供に専門かリベラルアーツのどちらを望んでいるのでしょうか?
米国の大学は、学校、教育内容で質が大きく違うように思われるのですが、その辺も知りたい。

HYPSMに関しては、トランスファー?編入学の枠もありますね。
そのあたりも加味したら、日本みたいに厳しくないかもしれないですね。



> やはり、教養を学ぶのは、中流より上の方が多いということでしょうか、それにしても厳しい大学入試ですね。ハーバードなんか、頭ができる一般庶民が入学すれば相当、浮くでしょうね。
  HYPSMに関しては、編入枠が多いと思ったのですが、それも厳しい。本当にUSAの大学は、複雑怪奇です。
  それにしても、USAの場合、大学ランキングなど、毎年、入れ替わりますが、willy氏の実感としては、USAの大学ランキングは、日本のような東大を頂点としたピラミッド型なのでしょうか?
  毎年、公表されるUSA大学ランキングでは、モルモンのブリガム・ヤングとか善戦しているように思うのですが、また、面白い話があればブログ記事、よろしくお願いします。
  私が知っている英国に関しては、まあ、オックスブリッジでもカレッジでピンキリでした。階級&学歴社会でしがない会計事務所にいましたが、どこも学閥人事でした。あの閉塞感は、日本以上でした。

No title

ゴーディアンさん:

アイビーリーグは純粋に学力スコアだけで取るのは約10%ということですから、
学力だけで入ろうと思ったら東大理3や京大医学部レベルの競争ということですね。
残りの大半を占める「全体評価」で入学してくる学生は課外活動を頑張るわけですが
スポーツや音楽、ボランティアなどは勉強とは違って何時間かけたかが
効いてくる世界ですから、スケジュールが殺人的になるのも理解出来ます。

リベラルアーツカレッジ(LAC)とリサーチユニバーシティ(RU)の間の選択ですが、
競争面でもトップのRUの方が難しいですし、
教育の内容もRUの方がダイナミックです。
一流LAC出身の優秀な米国人も確かに多いですし
面倒見が良いのも事実でしょうが、
個人的には、WilliamsやAmherstのようなカレッジが、
ハーバードやスタンフォード、MIT等に比肩するとは思っていません。

編入について。
アイビー校の編入はかなり少ないと思います。
ハーバードは、応募1600人に対し入学は12人です。
一方で、州立の旗艦校は編入をかなり受け入れていますね。
編入の方が易しいとも言われますし、
金銭的にも地元の安い大学に2年通ってから編入した方がお得です。
後は4年間同じ大学で親友を作って青春を謳歌したいか、
という選択なのだと思います。

豊かな人生

投資効果と思えば学歴や学位は意味のない時代がすぐそこかもしれませんが、こちらで取り上げられている話のポイントはシンボルとしての学歴やお金を作ることによる幸せの話ではないですね。将来子供が専門的にやりたいことをやってゆくために最小限必要な知識、技術、場合によれば人脈などは高度な教育を受けないと得られません。テーマをもった研究や音楽などなどがそうですね。

教育に専門的に関わっている方でもなお専門的な体験者との会話から得られることも参考にされて教育の方向を決定してゆく過程はお受験レベルではないお子さんの知性の発展に関わる話、このような環境下のお子さんは羨ましい限りです。もちろん方向決定には親子のコミュニケーション、お子さんの資質を見極める力が親御さんに備わっていることなどが前提でしょうけど。

準備を着々とやってきて実務を捨てて最近大学の研究の場(は収入や時間的にはまったくブラック)にもどったわが子の教育課程や日本大企業の立場を捨て香港、中国に来た自分自身を踏まえて申していること、ましな収入や地位を捨ててもやりたいことがある人もいるということです。

複合的な学歴や経歴を得ることで自身のビジネス上のステイタスを上げたいのは街のやや知的な中国人しかりであり、アメリカ事情の詳細はWillyさんなどの情報でしか分かりませんがおそらくそうでしょう、そのような踏み出しのためにはスタートから相対的に高いレベルの教育が必要です。
最後にお書きの様に、その結果が貧しい老後を作る不安につながると思えるならそうなりたくない選択もあっていいこと、`豊かな人生`観の分岐はあり得ることですね。

No title

いつも記事を興味深く読ませて頂いております。

大学に入るのに、このような選定方法ですと、
いわゆる社交的なスキルが欠如した
学力特化の「天才」と呼ばれる人達は、
一流大に行けないことになると思うのですが、
アメリカ人はこれに関してどう思っているのでしょうか?
社会的損失になっていないでしょうか?

日本でも教育や就職において、
このような選定方法が中心となってから10年以上経ち、
近年大きな社会的損失になっていると感じています。

それとも、アメリカではそのような人達が
力を発揮する場所に組み込むような仕組みがあるのでしょうか?
または、このような選定方法で選ばれた人たちだけで、
社会が担われており、問題ないということでしょうか?

No title

白鳥さん

そもそも社会で活躍するために一流大学に入る必要はないように思います。アカデミアなら大雑把に言ってUS Newsの総合大学ランキング100位くらいまでの州立の院に進めばチャンスは十分ありますし、多分地元の大学できちんと勉強すればその辺りまでは行けます。企業への就職も、米国はスキル重視なので一流大学を出る価値はそこまで高くないと思います。もちろん起業も学歴はそこまで関係ないでしょうし。

No title

Willy 様

ありがとうございます。
米国では、企業側がスキル重視の採用をしているということで納得致しました。

先日の日本の就活の記事でお書きになられていたことなのですが、
日本の企業は、スキルで採用するというシステムが存在せず、
ほぼ人物評価だけで採用が決まりますので、
人物評価では赤点の天才が、技術発展の枠に組み込まれずに、
起業しないかぎりは、単純作業に従事していることで、
国力を損なう深刻な結果となっているのではないか、
という懸念をもとに今回コメントさせて頂いた次第です。

今後とも記事を楽しく拝見させて頂きます。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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