大学教員の昇進審査 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカの研究大学のテニュアトラック助教の昇進は、
主に、研究(査読付き論文や推薦書)、外部資金の獲得、
教育の3点で判断される。建前としては、Service、つまり、
大学や学科の委員をやったりする事も考慮されるが、
実質的にはあまり関係がない。

学科にとって一番重要なのは外部資金の獲得だが、
これはハードルも結構高いし、獲得しても直接効力があるのは
アメリカだけなので他国に移るときには使えない。
確かに金銭的にははっきりしたメリットがあるし履歴書にも書けるが、
理論中心の分野ではこれは最重要にはなり得ない、
というのが現時点の私の考えだ。

一方、教育は建前では業績評価の45~50%を占めるが、
実際上はそれほど大きな問題にはならないようだ。

もちろん授業はベストを尽くしているし、
学期中は最も多くのな時間を費やしているが
受ける学生の要望や科目との相性もあるので
時間をかけてじっくり改善するしかないだろう。

やはりどこに行っても通用する業績は論文の質と量だ。
良い雑誌に通すのはなかなか大変で、単に壁に跳ね返される事もあれば、
理不尽なレフリーにあたって没になることもままある。
これは別に僕が不運な訳ではなくてレフリー制度というのはそういうものだ。
審査中に似た内容の論文が別の雑誌にpublishされてしまったこともあった。

今日は、半年かかって、割と有名な雑誌からレフリーリポートが来た。
結果は「リバイズ」。証明がいい加減なところがあるとのこと。
全体の論調はポジティブなので、冬休みに見直して
できれば来学期中にpublishしたいところだ。


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アメリカの大学の授業は易しくて厳しい -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカの大学における数学の授業は、
日本より2~3年分遅れている。
アメリカの学部向けの教科書は大雑把で
難しいところがあるとすぐに証明が省かれたりしていていい加減である。
昔はそうでなかったのだと推察されるが、今は書くほうも
「アメリカの学部生にはこの程度が適当」
という諦めの境地で書いているのだろう。

一方で成績のつけ方は厳しい。
日本の大学では内容を理解していなくても、
温情でよい成績をもらうということは日常茶飯事だが、
アメリカの大学は、ある程度内容をきちんと理解しなければ
ほぼ単位はもらえない。


今学期の統計入門の授業には、
学期が始まって1ヶ月くらい経ってから
ごり押しで登録していた社会人学生が一人いる。
彼女は別の有名な大学からの聴講生で、
どうしても統計の単位を一つ取らなければならないので
その大学の先生に勧められてWS大の統計の授業を
取りたいのだと言う。
一旦は断ったのだが、
大学の教官に勧められたということであったし、
どうしても、ということなので履修を認めた。

彼女の1つの問題は
最初の1ヶ月分が抜けているということであったが、
もっと大きな問題は数学の基礎知識が欠けていたという点だ。
WS大の学生であれば、Prerequisite と呼ばれる受講資格を
満たしていなければならないが、彼女の場合は聴講生という
ことでそこを上手くすり抜けていた。
しかも、彼女は前回、数学のコースを取ったのが
10年も前のことであり内容を
ずいぶん忘れてしまっているようなのだ。

彼女は遅れを取り戻すべく、宿題を真面目にやり、
ノートも完璧に取って復習しており、
週に2回は一時間くらい質問に来る。
それを2ヶ月続けているが、前回の中間試験も
クラスの最低点を取ってしまった。
一応、最低ランクの成績で単位は取れそうだが
コこのースは明らかに彼女にあっていない。

ついつい登録を認めてしまったが、
条件を満たさない学生の登録は認めるべきでない
というのが今回私が得た教訓だ。
本人も大変な思いをしなければならないし、
教員の方も余計な負担を強いられる。

昔の日本の大学は、厳しい入学試験によって
入学者のレベルはそれなりに確保されていた。
大学は自分で勉強をするところだったし、
教員は学生を大人として扱った。

入学の基準が非常に低いアメリカの州立大学で
その仕組みは成り立たない。
今は日本でも少子化によって一部の大学を除けば
似たようなことが起こっているだろう。
どの先進国も大学の大衆化に合わせて
授業の運営方法を適切なものに変えなければならない。



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アメリカ大学教員のお休み -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今週木曜日は、サンクスギビングでアメリカは休日となる。
アメリカ人は祭日を大切にするが、サンクスギビングはその中でも
日本の正月にあたるものと思ってよい。
多くの大学で水曜日から金曜日の授業は休校となる。
世間は北朝鮮の話題よりも
「帰省で飛行機に載る際に、空港で新たに導入された
全身丸裸にされるボディースキャンを拒否すべきかどうか?」
で盛り上がっている。

私にとって過去1ヶ月は非常に忙しい月で、
グラントの申請が2件あり、中間試験が3回、
またやや問題のある学生の対応に手を焼いたりして
(それに加えて私的な事情もあり)
研究をしている時間がほとんどなかった。
なんだかやけに忙しいなと思ったりしたが、
やはり年間通して考えれば大学教員のメリットは休暇が長いことだ。
日本の大学と比べても入試事務がない分、休みはかなり多い。

WS大の今年度の休暇スケジュールは以下の通りである。
(祭日を除く。)

12月22日~1月9日(2.5週間):冬休み
3月12日~3月20日(1週間):春休み
5月5日~8月31日(17週間):夏休み

というわけで1年=52週のうち、20.5週は休みだ。
研究とか、授業の準備とか、いろいろとあるが
やはり自由にコントロールできる時間が多いのは大きい。
給料は9ヶ月分しか出ないが、時間はお金より大切だ。

うーん、テニュア取れるように頑張るか。


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グラントの申請 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

毎年11月7日は、NSF (National Science Foundation)の統計分野における
グラントの締切日で今週の月曜日まで、その作業に追われていた。
アメリカ人は easygoing な国民性だが事務手続きが煩雑なのは
日本のとさして変わらない。

グラントというと、高い実験設備を買ったり、動物実験をしたり、
というイメージがあるかも知れないが、数学の場合には設備は
ほとんど要らないので、グラントとは要するに人件費である。
実際には、応用分野でも最も高いのは人件費だろう。
これは、アカデミック以外の人も知っておくべきことだ。
スーパー・コンピューターは世界2位でも良いかも知れないが、
科学技術予算を削るのは将来の人材への投資をやめるということだ。
別にやめても良いが、それが重大な意思決定であるということは
認識しておくべきだろう。
(もちろん、闇雲に不要な分野の人材を養成する必要はないが。)

NSFのグラント申請はオンラインで行われる。
Fastlane.org と grant.gov という二つの Website があり、
NSFに関しては、Fastlane.org が使われることが多いようだ。
grant.gov の方が包括的で入力事項も多く複雑だ。
実際に応募するには、予め所属機関経由で発行する
パスワードを取る必要がある。
また、提出前に学科長や学部長など何人かのサインが必要になるなど
実際には締切日の大分前に仕上がっていないといけない。

グラントの提出書類はこんな感じだ:

Summary: プロジェクトの分野における意義、社会的な意義。1ページ以内。
Description: プロジェクトの概要。15ページ以内。
Reference: Description で使われた参考文献リスト。
Budget: 予算の一覧。
Budget Justification: 予算の算出根拠。
Biographial Sketch: 研究者の略歴。2ページ以内。簡素な履歴書(CV)。
Facilities, Equipment: 研究する場所や設備などの概要。
Current & Pending Support: 現在、受けているグラントの一覧。

そのほかに、プロジェクトの基本情報など、
online にアクセスして入力した基本情報からいくつかの
ファイルが作られる。

グラント申請の性質上、予算は特に重要な項目だ。

アメリカで理論分野の学科の大学教員の多くは
9月から5月までの年間で9ヶ月の雇用契約になっており
残りの3ヶ月のうち、2ヶ月をNSFなどの政府系のグラントから
もらっても良いことになっている。
つまり、grantを持つ教員の給料は持たない教員に比べ
22%ほど高いということだ。
(ちなみに統計分野では一流大学の教員がグラントを取っても
普通に民間企業に就職した場合の給料に及ばない。)
その他、ポスドクや院生、アルバイトなどの人件費を申請する
こともできる。また、申請は複数人で行うこともあるので
その場合は PI(Principal Investigator)が複数になり、
予算の規模も大きくなる。

設備などが不要の場合、基本的にはこれら給料の額を元に
その他の必要経費を所属機関のルールに基づき加えていく。
例えば、一人のプロジェクトで人件費(salary)が1万ドルとしよう。
すると、総額とその内訳は例えば以下のようになる。
なお、NSFのグラントがつくプロジェクトは通常1~3年程度なので
3年間であれば予算額は約3倍になる。

Salary: $10,000
Fringe Benefit: $1,000
Indirect Cost: $5,000
-------------------------
Total: $16,000

Fringe Benefit とは、雇用主負担の社会保険料などであり、
Indirect Cost とは所属する大学や学科が受け取る事務経費である。
別に、教員がグラントをとっても実際にかかる大学側の経費は
変わらないが、いわば優秀な研究者を輩出した報奨金として
大学が経済的なメリットを受けることができるというわけだ。

したがって、大学が人を雇う際にも、グラントを取れる研究者か
どうかというのは重要な項目となる。

審査は、NSFの専任の学者(著名な研究者が大学から出向/転職する)が
外部の審査員に依頼して、おおよそ6ヶ月以内に行われる。
この審査のまとめ役は、統計学の場合は現在3人いる。
審査結果は、基本的にはプロジェクトの出来次第だが、
審査員やその選び方にも大きく依存してくるので
彼ら専任職員のパワーは絶大である。

数学の場合、プロジェクトの計画だけで予算配分が決まる
というのは疑問も多いが、こうした予算配分によって、
志向するリサーチの方向性を国が主導することができるし、
研究者も外部にアピールすることで自分の目的意識を明確にできる。

ジャーナルに論文を投稿するのはどの国の研究者も同じだが
こうした予算配分のシステムは国によってかなり異なる。
これは、各国の大学の特徴づけている最も重要な事項の一つだろう。


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NBER-NSF Time Series Conference at Duke U -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今週末は、ノースカロライナ州のDuke 大学で行われた
NBER-NSF Time Series (時系列) conferenceに参加した。

金曜日の授業は代講を頼んで、木曜日にノースカロライナへ。
金、土とコンファレンスに参加して、土曜日の夜は
日本人の友人と食事。
明日(日曜日)の昼に飛行機でデトロイトに戻る予定だ。

以下、覚書として様子を簡単にまとめておく。

1.参加者

Richard Davis, James Stock, Tim Bollerslev など
著名な計量経済学者も参加。時系列は、アメリカの統計学科では
下火なので、大半は計量経済系の人になっている。

アメリカでやってる割には
Duke周辺の研究者を除けば米国からの参加の割合はそれほど高くなく、
ドイツ、カナダ、イギリスからの参加が結構多かった。

大学のほかは、各国の中央銀行から多数の参加があったほか、
米国センサス局からも2名ほど参加していた。

参加者は合計で100名前後。日本からの参加は残念ながら無し。
日本人は自分を含めて二名。

2.発表の傾向

特に無し。金融時系列は高頻度データが流行っているが、
金融時系列でも本当に高頻度一色という感じではない。
ジャンプも流行っているが発表はそれほどなかった。
MCMCを使っているものは多かったが、Duke は Bayesianが
多いので当然だろう。SVARとかをやっている人も相変わらず
多いが、これも流行っているわけではなく、実証では以前と
して便利だからということだろう。

敢えて言えば、マクロや金融の伝統的な時系列を扱ったものが
ほとんどで、ウェブ上で得られるデータや空間データなど
など新しいものを使ったものが見当たらなかった。
また、変数の数が標本数より多い large p small n 問題を
扱ったものもほぼなかった。そのあたりは、計量経済の人が
大半だったというところに起因するのだろう。


3.発表はした方がいい

今回は発表をしなかったのだが、
ポスターでも良いので発表はした方が良いと改めて感じた。
やはり、いろんな人に顔を売るのは発表するのが一番だ。
ちなみに来年のコンファレンスは、ミシガン州立大で行われるが
オーガナイザーも知り合いなので
来年はなんとか論文を提出したいところだ。


やはり、テーマを絞ったコンファレンスは参加のしがいがある。
いまは論文はインターネットで探せるが、やはり人が集まるところに
行くと、気づかなかった情報を仕入れられるので有益だ。
なんとか、毎年旅費の目処を立てて参加しようと思う。


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大学院の授業割り振り -- このエントリーを含むはてなブックマーク


明日は、来年度の大学院のコースの割り振りを決める日だ。

経営的には、専任教員は大学院に特化させ、
学部教育は安い賃金で人を雇って教えさせればいいのだが、
どこの大学もそこまで分業化は進んでいない。
数学や統計学科の場合、研究大学の教員は年間4コース教えるのが一般的だが、
うちの大学の場合、年間4コースのうち大学院向けは1コースのことが多く、
時折2コースになる程度だ。
(1コースは週4時間なので日本のコマ数とは異なる)

大学院向けと言ってもアメリカの大学だと修士向けの授業は
それほど難しくないのでうまいことそういうコースを担当しまえば、
それほどの手間はかからない。
逆に、そういうコースを選べなかった場合、
どのあたりまで教えられるかも見当をつけておかなければならない。

実はコースの内容をまだあまり把握していないので、
今日はWS大に長くいる同じ分野の教授に話を聞きに言った。

自分「Advanced Stat ってコース、以前はどのテキスト使いました?」
K教授「あー、そのコースね。自分で本書いたんだけど、
   そろそろ出版されるはずで…(パソコンの画面に出して)ほらここにあるよ。
   昔教えた時に、こんなのも書いたんだ。あとこんなも。」
自分「(あー、このコース、当面この人に任せれば大丈夫そうだな)
   なるほどー。そういえば、線形モデルってどのテキスト使ってます?
   あんまりいいテキストないですよねー。」
K教授「あー、それも自分で書いたよ。今学期教えてるんだけどね。ほら。」
自分「(あ、それ使ったら僕でも簡単に教えられそう)
   それ、良さそうですねー。」

どのコースも自分でテキスト書いちゃってるのには驚いたが、
取りあえず誰も教える人がいなくて難しいのを押し付けられるのは
避けられるかもしれない。
いや、何とか避けたいと思う、ほんとに。


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あせるチューター -- このエントリーを含むはてなブックマーク

教えてるクラスの過去問を貰おうと思って数学科のチューター室へ。

学部生がたくさんいて、チューターが二人。
あまり使ったことがないので、そのへんにいる学部生に
「チューターってどこ?」と聞く。どうも二人いるらしく、
院生Aは教えている最中で、院生Bは寝ている。

しょうがないから、寝てる院生Bに
「あ、ちょっとすみませんが」
と言ったら、ごにょごにょ言って起きたが、まだ寝ぼけていて
僕と向かい合わないまま下を向いて、
「…あ、ちょと待って。2~3分…。用事はなに?」
と聞いてきたので、
「えーっと、解析のクラス教えてるんだけどここに過去問ある?」
と尋ねた。

どうやらそこで初めて話している相手が教員であることに気づいたらしく、
超慌てる院生B。あまりに慌ててるので、
「いや、全然気にすることないって。過去問ある?」
となだめてたら、
「Of course!」
なんて答えながら、もう声がほとんど裏返ってる。
小田和正みたい(つまんね、、)。

別に僕は悪いことしてないんだが、申し訳ない事をしたような気がした。


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ジャンル : 海外情報

新年度の授業開始 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

WS大は今日から授業開始だった。

アメリカの大学の授業は9月からだが、
オリエンテーションやら事務作業は8月に終え、
Labor Day (9月の第一月曜)の前後には授業を開始する大学が多い。

日本の統計関連学会連合会は9月の一週目頃にあるのが普通だが、
アメリカの大学は新年度の最も忙しい時期なので参加できないのは残念だ。

今学期の授業は、
月火水金の昼前の授業と月水の夜の授業なので
水曜日の今日は朝から晩まで大学にいなければならない。

朝の授業は微積の授業。
よく考えるといわゆる純粋数学の科目をアメリカで教えるのは初めてだ。
もっとも、日本の高校数学の数Ⅱ、数Ⅲの
微積分のカリキュラムとほぼ同じ内容である。
高校数学は日本の予備校でさんざん教えたので
言葉が違う以外は教え慣れた内容だ。
バイトで高校生に教えていたのは10年以上前だが、
人生、何が役に立つか分からないものだ。

20人ほどのクラスなので自己紹介をしてもらったら
結構多くの学生が高校の選択科目で微積の授業を取っているようだ。
日本の初等・中等教育の数学のレベルは
今でもアメリカよりだいぶ高いと思うが
決定的なほどの差があるわけではない。
(WS大は優等生が集まる大学ではないことを考慮されたい。)
しかもアメリカの授業では、
内容を理解しないまま単位を取得する事は難しい

ので授業の内容が同じなら
平均的な理解度はアメリカの方がやや上だろう。


最近は統計を教えるのになれてしまったが、
教える準備という意味では数学の方が楽だ。
論理的にはより明快に説明できるし、
面白いデータを準備したりする必要も無い。

一般にアメリカの大学に勤める上では
どんな科目を教えなければならないかは結構重要だ。
例えば、私は計量経済学っぽいことをやっているので、
経済学部の教授から
「あれ?君、経済学部に応募したらよかったのに。」
などと言われたこともあるが、
英語でミクロ経済学やマクロ経済学を
教えるのは私には大変すぎる。
だから、経済学部には一つも応募しなかった。
アメリカの大学への就職を目指す人は
そんな点も考慮した方が良いだろう。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

日本人研究者の海外進出が進まない理由 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先週末に、大学生の頃の友達数人と会った。
アカデミアに残っている友人もいるが、
日本の研究者取り巻く環境はかなり厳しいようだ。
各種報道や調査から分かるように若手はかなり優秀な研究者でも
先の見えない任期付きポジションで食いつなぐ事を強いられている。

それでも日本人研究者がそれほど海外に出て行かないのにはいくつかあるが
ことに理系に関して言えば、どうやら一番大きな障害は言葉の壁ではないようだ。
主な問題だと感じたのは以下の3点である。

(1)男女関係などを含む人間関係の問題
(2)米国の大学とのコネクションの問題
(3)日本の大学への再就職問題


(1)と(2)は基本的には個人的な問題でありながら
日本人のアメリカ社会でのプレゼンスが低いことのデメリット
を感じずにはいられない。
確かに、日本企業の米国進出に伴って日本人の数自体は増えているが、
それは主にアメリカに「日本企業村」を作ったということであって
アメリカ社会でのプレゼンスが高いわけではないのだ。
これはアカデミアでも企業部門でも言えることだろう。

もちろん、既存の人間関係を維持するという観点からは
日本から出る自体がそれなりのマイナスだが、
少なくとも日本人がアメリカにもっと増えれば、
有意義な人間のつながりも増えるだろうし、
新たな日本人と知り合う可能性は上がっていく。
アメリカはコネ社会なので、小さな民族グループに
所属していることは基本的に不利だ。

このブログを書いている動機の一つは
アメリカに来る日本人を増やしたいということだが、
何故増えて欲しいかといえば、アメリカで日本人の
プレゼンスが高くなった方がいろいろな点で都合が良いからだ。

(3)に関しては、やはり文部科学省の無策・無責任ぶり
非難せずにはいられない。

現状、博士修了後の若手研究者が何とか食べていくことができているのは、
国がそれなりの数の任期付きポジションを提供しているからだ。
しかし、十年後、二十年後ににこれがどのような状況になるのかは全く分からない。
子供の数が減り、国の財政が逼迫する中では、
教育・研究予算は削減されるだろう。
今の文科省は将来の予算にコミットしたくないから、
取り合えず任期つきのポジションだけを増やして
その場しのぎの政策でまわしている。
しかし、文科省が場当たり的に対応する限り、
各研究者は数少ないポストを目指して延々と競争せざるを得ない。

別に博士を取った人全員を教授にしろ、と言いたいのではない。
そもそも、そんなことは不可能だろう。
しかし、もし政府が各研究者にコミットする形で
何らかの長期的なビジョンを示すことさえできれば、
国内で見込みがないと悟った研究者は、
若くて柔軟性の高いうちに早めに海外に流出するなり、
他の分野に進むといった進路を選択することができる。

このまま場当たり的に若手研究者を使い倒して、
10~20年後に40代、50代になった研究者に
「もうポストはありません」では、
自殺者が多発する状況になりかねないだろう。

こうした高学歴層はマイノリティーであり政治的には非常に弱い。
政府は、短期的に痛みを伴っても責任ある計画を立てて遂行すべきだ。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

他大学のセミナーへの参加 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

私のいるWS大の数学科はそれなりに大きいが、
統計をやっている人は4人くらいしかいないので少し寂しい。

夏休みに入って時間の自由がきくようになったので
先日、East Lancing にあるミシガン州立大(Michigan State U)の
統計学科のセミナーに参加してきた。
今回は初回だったこともありいろいろなファカルティー・メンバーと
話も出来てそれなりに意義があったのだが、私の住んでいるTroy市から
ミシガン州立までは130kmほどもあり、道路が空いていても片道
1時間半はかかってしまうので、頻繁に参加するのは少し厳しそうだ。
また、セミナーは毎週火曜日の午前10時20分からなので、
学期中は大抵WS大の授業と重なってしまう。

ミシガン大(Ann Arbor)は
WS大から50分程度と少し近く、
毎週金曜日の午前中にセミナーがあるのだが、
こちらも普段は授業と重なり参加できない。

何が言いたいのかというと
アメリカの大学は雑用が少ないという意味では
研究環境は良いと思うのだが、
研究会への参加や人材交流という観点からは
国が広いだけに不便
であるということだ。
東海岸や西海岸の大学であっても、状況はあまり変わらない。
統計に関して例外は、3つの研究大学と2つの国立の研究所が集中する
ノースカロライナ州の Research Triangle Park 周辺くらいだろう。

これは、首都圏であれば学界、産業界問わず、
何不自由なく交流が可能な日本とはだいぶ状況が異なる。

米国の大学への進学や就職を考える際、
人材交流が重要な分野ではそうした地理的条件も
少し考慮しておいて損はないだろう。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

アメリカに大学教員は多すぎるか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

Rionさんの経済学101のブログにアカデミアの労働市場に関する記事
が載っているので、私も現場からの意見として一言書いておきたい。

記事によると、アメリカの大学では非常勤講師の数が増え続けており
今や教員の73%にも達しているとのことである。

私は数学科の外の話は詳しく知らないが、
数学科あるいはそれに類する理論的学問分野に関して言うと、確かに
アメリカの大学のいわゆる教授、准教授、助教といったアカデミック・
ポジションの数は経営的な観点からはまだ多すぎると思う。

なぜなら、そうしたポジションの人を必要とする
大学院生向けの授業の数があまり多くないからである。
例えば、私の大学では通常、常勤の教員は
年間に4コース(2コース×2セメスター)の授業を持つ義務があるが
そのうち大学院向けのコースは多くても2コース、少なければ1コースである。
それ以外の授業は、学部生向けのもので、修士卒や博士課程学生でも
全く問題なく教えることができる。
教官の側からすれば、学部生の授業を教えるのは準備も少なくて簡単だし
教育は仕事の半分以下でしかないのだから、大した不満はないが、
高い給料を取る研究者にこれらの授業をたくさん持たせるのは
経営的には大いなる無駄だろう。

ただし、冒頭の非常勤講師が増え続けているという状態は
現状では必ずしもうまく機能していない。

問題の一つは非常勤講師の大半が大学院生であるということだ。
多くの大学院生にとっての死活問題は学位を取れるかということであり
良い授業をするインセンティブはほとんどない。
確かにクビになったら彼らも困るが、実際は
セクハラや不公正な成績評価など極端な問題を起こさない限り
クビになることはほとんどない。
必然的に授業の質は個人の労働観に依存してしまうため、
一部の人たちの仕事ぶりは本当にひどい状態だ。
2~3分で終わる数値入力を断ったり、
忙しいからと言って宿題の採点を拒否したり、
演習の授業準備をするのが面倒だからと
宿題の答えを(期限前に!)黒板に丸写しするTAもいる。

一方で、大学院生の雇用コストは安くない。
これは通常、雇用と引き換えに院生の授業料や保険料を
学科あるいは大学が負担する慣例になっているからだ。
例えばYale 大では院生の雇用コストがポスドクのそれよりも
高くなってしまうので最近はポスドクを増やしているという。

経営上合理的な方法は、
専門的でない学部教育と専門的な教育(主に大学院)を切り離し、
前者は修士修了程度の教員を(おそらく専任で)採用することだ。
研究職の教官には大学院の授業を持たせれば住み分けができるので、
授業時間数が大きく違っても問題は起こらない。
同一科目を同一教員が多く担当するようにすれば、
現在の高校教員に近いイメージになるので、
週に20時間程度の授業を持たせることは十分可能だろう。
これは研究大学の常勤ポストの教官が教える時間数の3倍程度だ。
それでも民間企業対比では休みや自由時間は十分にある。
研究義務がなく修士卒が条件であれば、賃金は現在の常勤ポスト
平均の8割くらいでも集まると思われる
大雑把に言って年俸6~8万ドルくらいのイメージだろう。
結果、学部向け講義のコストは現在の3割以下に出来る。

学部生は話の端々に豊富な知識が滲み出るような授業は
聞けなくなるだろうが、ルーチンという意味での
プレゼンテーションの質はむしろ上がる可能性すらあるし、
何より現在よりも安い授業料で大学に通うことができるようになる。

(もちろん、大学のコストは講義料だけではないのでそれだけで
授業料が3割になるわけではない。)

確かに、一部の学生(とその親)は高い授業料を払っても
専門家から生の話を聞ける授業を望むかもしれない。
しかし、それはほんの一部の私立大学がやればいいことだ。
多くの大学が求めるべきものは、
より合理的な経営と学生の懐を痛めない授業料であるように思う。

ほんとにそんなことやられたら自分は解雇されるかも知れないけどw


テーマ : 大学
ジャンル : 学校・教育

数学科教員のミーティング -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日、学科のミーティングがあった。
学科のミーティングは年度初めと年度末の2度だけである。
私は会議が嫌いなので少ないのは嬉しいことだ。

そういえば日本で働いていた頃、
仕事の性質からグループ会議(15人前後)が頻繁にあったのだが
一度、作業に熱中していてすっぽかしたことがある。
自分が発表するわけでもなかったので
会議をすっぽかすだけなら珍しくないのかも知れないが、
状況が特殊だったのは
グループ全員が10メートル四方くらいの同じ一角で働いていて
会議室もグループの隣りにあったということだ。
私はちょうどグループ員が視界に入らない向きに座っていて
作業が一段落して後ろをみたら誰もいない。
「あれ?」
と思ってすぐに会議中だと気づいた。
既に30分くらい経っていたので入るのは諦めた。

あとでグループの同期から聞いたが会議室内では、
「あれ、Willyがいないんじゃね?」
「彼は、なんか作業してるみたいです。」
「じゃあまあいいや。」
という会話があったそうだ。

閑話休題。

こんなことを書いて良いのかどうか分からないが
WS大の別の学科の教員から、
「学期はじめのミーティングは穏やかだけど、
学期の終わりは業績評価の罵り合いで凄いことになる。」
と聞いていたので少しびびっていた。

しかし、数学科ではそういうのは別にCommitteeを作って
そこで全部やってしまうらしく、極めて退屈な会議であった。

どのくらい退屈だったかというと
一番盛り上がった話題がコピーの話なのだ。
要するに、資源と経費を節約しようということだ。

「院生が本の全ページコピーとかしてるのはやめさせた方がいいんじゃないかね?」
という某教授のコメントから始まって、
「家でプリントすると1枚3セントしかかからないんだけど学校だとどうなの?」
「プリントとコピーとどっちが安いの?」
「裏紙を入れる箱を設置した方が紙を節約できるんじゃね?」
「コピー機はよく壊れるけど、メンテナンスの人はナイスだと一言触れておきたい。」
とか、ほんとにどうでもいい話。
コピーの節約方法なんて議論している組織に
効率的なところはない。

あとは、学科長が授業の履修者数や授業料収入の説明があった。
数学は明らかにお金にならない学問だが教育需要は大きいので
学部生向けの簡単なコースを教えるだけでも
大学としては数学科の収支は黒字になってしまう。
今年度の数学科は特に好調で授業料収入は10%以上増えたようだ。
数学者不要論というのはよくあるけど、
実は研究にお金を投入しなくても成り立っているともいえる。

もっとも来年度は州からの歳入がかなり減ってしまうので、
またしても大学側は授業料の値上げをするとのこと。
値上げ幅は5~10%の間に落ち着くだろうとのことだ。


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学科長と評価面談 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

学期の最後ということもあり、
先日、30分ほど学科長と annual review (評価面談)があった。
ちなみに偶然か必然かは知らないが、
学科長のDは温厚でとても人当たりの良い人である。
例外はたくさんあるが、
おおよそアメリカの大学で学科長をやっている人は
気配りがうまい人が多いように思う。

面談はそんなに大真面目なものでもないのだが、
リサーチ、授業のスケジュール、給与査定
等について話した。

リサーチに関しては、まず、
1) どのジャーナルにパブリッシュすべきか、と
2) 単著か共著かは関係があるか?
という点を主に聞いた。
WS大の数学科には明確な基準はないのだが
やはり少なくとも良いジャーナル
(例えば分野でトップ10のジャーナル)に
1本以上出しておくという事が重要なようだ。
これは、他の多くの大学でも聞く話だ。
私の場合は統計のジャーナルのほかに計量経済系のジャーナル
にも投稿することがあるのだが、それは特に問題ないようだ。
また、単著か共著かは数学科ではあまり問題にならないらしい。
少なくとも、first author かつ corresponding author だが
共著であることが問題ということはなさそうである。

WS大は外部からの資金獲得に特に重きを置いている大学なので
研究費の獲得はmustではないもののtenure審査に大きく影響するようだ。
私はW大M校時代に医学部の方々とcollaborationをやったので
評価報告には同様の事を期待するような文言が入っているのだが、
collaboration によって研究費を獲得しても PIでなければ
研究費獲得にはカウントされないということなので
やはり私にとってあまりメリットがなさそうである。
来年も同じような文言が入るなら、
留保条件をつけてもらった方が良いのかもしれない。

授業スケジュールについては、
WS大の学部向けの授業は月火水金と週4日のコースが多い。
できれば金曜日にミシガン大の統計学科のセミナーに
出たいのだが、WS大のスケジュールだと難しい。
その点を伝えたところ、
全うな理由なので希望を出せばある程度考慮される、
とは言われたものの全体的な状況を見ると、
良くても秋学期と冬学期のどちらかだけ金曜日を
避けられるという程度だろう。

給与査定の話は、向こうからしてきたので少し驚いた。
研究費の獲得の部分を除けば大学は基本的に社会主義なので
そんなことを気にしても仕方がないのだが、
新しいファカルティーは少し昇給してもらえるらしい
(但し0.1%単位の話)。

そんなわけで今年度は無事終了した。


テーマ : 教師に求められる能力
ジャンル : 学校・教育

学生による授業評価(2010年冬学期) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

WS大では、早くも冬学期が終了した。
日本のGW期間中に期末試験がありその後はもう夏休みになる。

今学期も先学期と同じコースを持ったのだが、
学生による授業評価(Teaching Evaluation)は予想以上に良く
先学期は5段階(5が最高、1が最低)で
平均3.0程度だったのが今学期は4.5程度まで上がった。
基本的に先学期と同一内容の授業をやったのだが
何故ここまで違いが出たのだろうか。
思い当たる理由は以下の通りだ。

(能動的な理由)
― 成績を絶対評価に切り替えた。
― 成績の4%を出席点として、出席率を向上させた。
― 板書をきちんと丁寧にするよう心がけた。
― 授業で自らの経験をなるべく織り交ぜるようにした。

(受動的な理由)
― クラスの人数が少なかった。
― 人数が減った結果、個別の学生と話す時間が増えた。
― 礼儀正しい学生が多かった。
― 先学期と同一内容だったので流れがややスムーズになった。



どうやら、能動的な理由の中でもっともインパクトがあったのは
絶対評価への変更
であったと思う。
アメリカの学生は相対評価に慣れていないため、
例えば「原則的に6分の1の学生にAを与える」
というような説明をすると尊厳を傷つけられたと感じるようだ。
絶対評価と言っても先学期の結果を参考に基準を決めているし
中間試験の得点によって微修正を行っているので
実質的な基準は変わっていないのだが
原則論は重要らしい。
試験の難易度や得点分布はほぼ同じだが、
成績や得点に関する不満は今のところほとんど出ていない。

出席率と評価の相関関係も結構高いのかもしれない。
例えば、teaching evaluation では出席率の高い学生からの
評価は常に高い。これは、授業を気に入った人の出席率が高い
という単なるセレクション・バイアスの問題だと長らく考えていた
のだが、どうやらそれだけでもないようだ。やはり、
理由に拘わらず、授業に出席しない学生から良い評価を
もらうことは難しいということだろう。
ちなみに、私の授業はスライドを配布しているので
出席を取らないと来ない学生が多くなるようだ。

日本の予備校の授業などとは違い、結局のところ、
学生の一番の関心事は成績である。
そうした授業内容以外の点も結構重要であるということは
肝に銘じておく必要がありそうだ。


テーマ : 教師に求められる能力
ジャンル : 学校・教育

アメリカの地域と人気 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカでは、州を国のように思っていて州の外に一度も出たことが
ないような人と、他の州にすぐに引っ越してしまう人がいる。

他の州に出て行く人にとって行き先の
物価、治安、経済状態といった点は当然重要だが、
温暖でいつも太陽が出ているというファクターは
極めて大きく効いていると思う。


ウィスコン*シンやミシガン州では、
住みやすいランキングで上位になる都市が結構多いが
これは住環境が良いのに寒くてつらいので人が集まらず
地価が安い、ということに過ぎない、と私は思っている。

私は6年前、十数校のPhDプログラムに応募したのだが
テキサスにある中堅の大学に落とされた時はびっくりした。
実際のところ、応募者数はW大M校より多いそうだ。
以前に触れたことがあるが、大学院の出願先のリスクを
分散する上では地域も考慮したほうが良い。

昨年末には、カリフォルニア大が32%の授業料値上げを発表した。
州立大として昔ライバルだった競合関係にあるミシガン大でも
5.6%値上げするが、カリフォルニアの財政危機を考えても
32%は流石に暴挙だ。
「お金払ってもカリフォルニアの方がいいでしょ?」
という思惑が見え隠れする。
そもそも、お金持ちや国費・社費留学生など
学費が意思決定に影響を与えない学生もいるし、
既に入学してしまった学生は逃げられない。

WS大もフロリダあたりに引っ越したら良いのではないか、
と今度冗談の通じそうな教授に相談してみよう。



テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

大学教員の給与と夏学期 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

WS大のカレンダーでは、
9月~12月が秋学期、1月中旬~5月初旬が冬学期、
5月中旬~8月上旬が夏学期となっている。
冬休みがやや短く冬学期が終わるのが少し早いが、
基本的にセメスター制を採る大学の多くは似た日程だ。

数学科や経済学科のように教員がニートっぽい学科では
ほとんどの教員が9月から5月までの9ヶ月契約(実働7ヶ月半)
となっており、残りの3ヶ月は給料は出ない。(*1)

NSFやNIHなど連邦政府その他のグラントを獲得して
夏の間のうち2か月分の給料を賄うのが研究者のインセンティブに
なっておりそれを取ることが「一人前の研究者」ということになる。

夏学期は授業があまりなく主に夏も大学に残る院生が入門的な
コースを教えるのがメインだが、大学院向けなどいくつかのコースは
教官が教えている。これは9ヶ月契約に含まれないので、
うちの大学では1コース教えることで、給料の1か月分
(=9ヶ月契約の給料の9分の1)がもらえるようになっている。

一般に、研究大学の若手は、「一人前の研究者」になることを推奨されるし、
夏にコースを持つとコンファレンスに行くのも難しくなってしまうので
あまり夏学期を教えるという話は聞かないが、
アメリカの大学に応募する人、特に家族がいてお金が必要な人は
知っておいた方が良いオプションだろう。

ティーチングカレッジについては事情はもっとシリアスかもしれない。
分野にもよるが数学科のように資金がそれほど潤沢ではない学科では
ティーチングカレッジの助教が、子供のいる家族を長期間養うのは
あまり現実的ではない。一方で研究のrequirementはかなり低いはず
なので、夏のティーチングについては就職面接の時に調べておいた
方が良い内容だ。

(*1) 資金が潤沢な学科では初めの数年間はある程度の補助が出ることもある。


テーマ : 研究者の生活
ジャンル : 学問・文化・芸術

大学って教養のためにあるの?(その1-高齢層編) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

WS大はデトロイトのダウンタウンにキャンパスがあるので、
仕事を終えた社会人が夜間に単位を取りに来ているケースもたくさんある。
そのため、一般の大学よりも夜遅くまでキャンパスは賑わっており、
午後8時になっても人の行き来は絶えない。

私は去る秋学期は夜の授業を教えたので、数学の学部2~3年生向けコース
という内容にも関わらず、約40人中、少なくとも4人の社会人が科目登録
をし、少なくとも3人の学生が比較的良い成績で単位を取得した。
もっとも年齢の高い60歳前後の男性は、自動車会社のエンジニアとして働いており、
早期退職して高校の数学先生になるために私の科目を履修しにきた。
次に年齢の高い50歳前後の男性は、データ処理関連の仕事をしていて、
統計の知識を強化するために科目を履修した。もう一人は40歳前後の高校の先生で
理科の教員をしているが、数学の免許も取りたいということで授業をとりに来た。
彼らのキャリアや動機は三者三様だが、共通しているのは
年齢に関わらず明確なキャリアパスがあり、
その手段として大学に来ている
という点だ。
出来の善し悪しに関わらず、私はそういう学生を「プロの学生」と考えている。

翻って日本では少子化で大学の経営が困難になっていることもあって、
定年退職前後の60歳位の人達を大学に呼びこもうという試みがなされている。
もちろんそれは経営的な観点からは望ましいことであろうし、
学ぶことは全ての人にとって生涯の楽しみであるので、その受け皿は必要だと思う。
しかし、大半の学生が何の目的もなく単なる趣味や
知的好奇心だけのために大学に来ているのは大変残念

なことである。そういう学生は、たとえ授業を聞いている時に真剣だとしても
「アマチュアの学生」に過ぎない。

今日、朝日新聞社に「学びが個を目覚めさせる」というタイトルで、
立教セカンドステージ大学の紹介文が載ったがこの手の「アマチュアの学生」
を手放しで褒め称える姿勢は、私には物足りない(*1)。

日本の高齢者の価値観では
「60歳にもなって新たなものを学ぶ姿勢は素晴らしい。」
のかも知れないが、私としては
「まだ60歳なのだから学んだことを社会に役立てて欲しい。」
と思う。

大学側から見ると、確かに少子化の影響による経営環境の悪化は急速なので
それを埋め合わせるための手っ取り早い対策は必要だろう。しかし、
本当に一番大きな問題は、
日本の大学がこれまで経済社会に必要とされる教育を
十分に提供出来ていなかったことにある。
その本質から逃げて、学問を「文化」に結びつけて経済との
つながりから逃げるのは、あまり前向きな姿勢とは言えまい。

(*1) この記事は、英文学の教授が書いているので、分野の
特殊性から致し方ない面もあることを断っておく。



テーマ : 生涯教育
ジャンル : 学校・教育

本日で秋学期終了 -- このエントリーを含むはてなブックマーク



昨晩、期末試験が終わり、
今日は、昨日「調子が悪かった」学生の追試があるのみ。

というわけで今日は別件もあって大学に行くのだが、
何もなければ今学期はこれで最後になりそうだ。
12月25日から1月3日までは大学の建物が閉まるらしい。
実験系の建物なんかはよく知らないけれど。

これからは、毎日喫茶店かなぁ。

来年は、1月7日(木曜日)に授業開始。
日本人の感覚だと
(そしてウィスコン●ンの感覚でも)、
「中西部の冬は寒いんだからもっと長く休んで
フロリダにでも行けばいいのに」
と思うのだが、アメリカ人の考えでは、
「寒くてすることがない内に仕事は終わらせて
夏にいっぱい休もう」
となるらしい。
先日、娘のプリスクールも学期が終わったのだが
周りの人に話を聞いても、冬休みに遠出する、
という人は皆無であった。

WS大の冬学期は5月7日に期末試験が終わるそうだ。
そんなに夏休みを長くして一体何をするのだろう。
(模範解答:論文を書く。学会に行く。)

ともかく取りあえず学期が終わってよかった。



テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

Teaching Evaluation (学生による授業評価) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本の大学でも最近増えてきているようだが
アメリカの大学には毎学期末に学生による授業評価があって
学生が10~20くらいの項目に5段階で回答する。
もちろん大学によってフォーマットは違うだろうが、
W大M校とWS大で大体同じなので、少なくとも州立大学は
似たような仕組みをとっているのだと思う。
なお、院生がたくさんいる大学では
TAに対する評価とInstructorに対する評価が各々行われるが
質問項目が似通っているにもかかわらず、
概してinstructorに対する評価は厳しいようだ。

今学期は結構大真面目に授業をやったわけだけど
評価は予想以上に厳しかった。

評価の全体平均を知らないのでなんとも言えないが
平均には届かないような気がしている。
もちろん授業が下手なせいもあるし、
英語が下手なせいもあるのだろうが、
それは個人的な問題なので、
アメリカの大学生の気質について
抑えておくべき点をまとめておきたい。

1.テストは点数自体が良くないと納得しない。

統計の入門コースで100点満点のテストを行うと
大抵、平均点は60点くらいになる傾向があり、
これは教官や試験問題を変えてもそれほど変わらない。
低い点でもAが取れるようになっていれば、
全く問題ないように思えるのだが、
学生は80点とか90点といった
見かけ上良い数字を取らないと納得しない。
まさか、点が悪いとママに叱られるわけではなかろうが、
そういうものだと信じているようだ。
適当に点数を変換することは可能だが、
実際にどのくらい解けたか分からなくなってしまうので
私はそういった加工はしないことにしている。

2.絶対評価に対する過度な信仰がある

本来、科目の内容の理解度で成績を決めるというのが
望ましいのはその通りだろう。小学校や中学校なら
そういった方法は通用する。
しかし、学部の授業とはいえ、
きちんとコースの内容を理解する人は数人に過ぎない。
これをベースに成績を決めると、
過半数がFという結果になってしまうだろう。
しかし、それでも1.で述べたように
人工的に加工された80点、90点といった点数を元に
架空の「絶対評価」を行うことが望ましいと
考えている学生が多い。

3.努力は報われるべきと考えている

極論すれば、私は努力と成績は無関係で良いと思っている。
成績は理解度に応じて与えられるものだからだ。
しかし、
少なくともアメリカの大半の学部生はそう考えていないようだ。
やさしい内容の数学でも、きちんと理解する事は結構難しい。
しかし、パターンを覚えればパターン通りの問題を解く
事はできるようになる。
アメリカの学生は
このパターン暗記を大学までしっかり引きずっており、
パターン暗記の努力をすればよい成績が取れるべきだと
考えている。

さらに、既存の例題そのままでない問題が出ると、
問題が違いすぎる、といった文句が出る。
そして文句の出た問題の答えは教科書にそのまま書いてあって
問題形式になっていないだけだったりする。


4.個人的な事情も成績に考慮されるべきと考える学生が多い

病気・怪我などがあれば、
ある程度の特例を適用する必要は確かにあるだろう。
しかし、あまりにも見え透いた嘘で特例を求める学生が非常に多い。
また、単にテストのスコアが悪かったからということで
「追加の宿題をやるから成績を上げてくれ」
といった要望を出したり
「あと1点でAになるから何とかならないか?」
というような嘆願をしてくる。
もちろん、これは万国共通で程度問題だと思うが、
「言った者勝ち」のアメリカ社会の悪いところ
が影響している面が多々ある。
実際、(数学科ではないが)いい加減な教授もいて、
文句を2回以上言ってきた学生成績は原則的にあげてやる、
というようなことをやっているから、
こういうことが起こるのだろう。

(5.評価は学生の授業でのパフォーマンスに依存)

これは万国共通の問題だと思うが、
できない学生が自分の気持ちに整理をつける
ために、teaching evaluation で悪い評価をつける
という側面は否定できない。
WS大では全員にAを与えることも可能なので
teaching evaluation をどうしても良くしたいと思えば
成績を緩くすると宣言することもできる。
この問題は、大学の成績のシグナリング効果を
弱めるという問題を内包しているので
アメリカの大学はもっと真剣に取り組むべきだ
と思う。
成績の平均に制限を設けているのは、
私が知る限りではビジネススクールだけだ。

来学期に向けて対策も考えてみる。

1. → 極端にやさしい問題を混ぜる。
2. → 名目上、尺度を作る。大きくずれた場合はそれに合わせて得点調整?(不毛だ)
3. → 初回の授業でガツンと言う(笑)→リスキー?
4. → 特例の明確化→しかし明文化によって学生の言い訳も変化。

まあ、来学期も適度に頑張ろうと思う。





テーマ : 教師のお仕事
ジャンル : 学校・教育

学科長の誕生日パーティー -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本は知らないけどアメリカの大学で
他のファカルティーの年齢を知る機会というのはあまりない。
しかし、アメリカでも60歳は結構大きな区切りらしく、
60歳になった学科長の自宅で誕生日パーティーが開催された。

妻は、
「学科長の誕生日パーティーって・・・
数学科ってなんかのどかなところだねぇ。」
とか言っている。
娘は、
「今日はみんなでダンさんのおうちに行くんだねー。」
とか気楽に話している。「偉い」という概念を
知らないというのは素晴らしいことだ。
まあ、確かに僕もあんまり気にしてないんだけど。

しかも、木曜日の夜に開催なので、
「金曜日はお休み」モード全快である。
そもそも、金曜日に学科長からメールや電話が
来たことはないので金曜日は学校に行かないのかも知れない。
「かも知れない」と書いたのは、
自分も金曜日は大学に行かないのでよく知らないからだ。
私の家から大学までは道のりで片道20マイル(約32キロ)あるので
用がない日に大学まで車で行くのは地球環境にも良くない(笑)。

パーティーは日本の職場の集まりと違って
半強制参加ではないので来たい人だけが集まる。
まあ、そういうのによく来る人というのは
大体決まった人たちなのだろう。
今日は割と人数が多かったが、
過去にパーティーで見たことのある人は
大体みんな揃っていた。

ポットラックではなく
午後7時半からの遅めのパーティだったので
軽いつまみとワイン、ジュース、バースディケーキ
が振舞われた。

今日は子供のいるファカルティーが2~3人いたので
子供の学校のことなんかもいろいろ聞けてよかった。
幼稚園(kindergarten)は、学区によって半日だったり
一日だったりして結構な違いがあるらしい。

そういえば、パーティーに呼ばれると感心してしまうのは、
大抵リビングルームが二つあることだ(*1)。
それぞれの部屋に椅子やソファーがいくつかずつ置かれていて、
その二つのリビングとキッチンに適当に散らばって話す。

ホームパーティは大体流れ解散になる。
私は娘がいるので早めに帰ることが多い。
少なくとも最後までいたことがない。
最初から人が各部屋に分散しているので、
割と気を使わずに帰りたいところで帰れる。

私は日本にいたときに結構ホームパーティをやったのだが
日本の家の構造だとみんなで一部屋に集まる上に
座って話すことになるので途中で抜けるのが難しい感じだ。
ホストはあんまり早く解散を提案できないし、
ゲストは自分から率先して帰ると言うわけに
いかないというジレンマに陥って、難しいところがあった。

外国人の大学の教員ってなかなか交流の機会がないから
こういうパーティというのはなかなかいいけど、
ホストになるのはやっぱり大変なんだろうなぁと思う。
大勢が土足で家に入ってくるのってなんか嫌だし(笑)。

(*1) 不動産用語では各々ファミリールームと
リビングルームというのだろう。





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プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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